2012 Fiscal Year Research-status Report
家畜伝染性疾病に対するリスク管理の地域的実態に関する研究
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23520948
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
松村 啓子 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (60291291)
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Keywords | 家畜伝染病 / 口蹄疫 / 家畜防疫マップ / 埋却地 / 地域防疫 |
Research Abstract |
1.都道府県単位の防疫マップシステム導入状況に関するアンケート調査(有効回答22道県)によれば、特定家畜伝染病の国内発生(平成12年の口蹄疫、平成16年の高病原性鳥インフルエンザ)を契機とし、平成23年までに道県独自の防疫マップの開発(59%)、あるいは動物衛生研究所の家畜伝染病発生地図システムの導入(41%)がなされた。また、平成24年10月に運用が開始された農水省家畜防疫マップシステムは6割の県が利用している。同システムのメリットとして、隣接県の飼養状況の把握、関係機関との情報共有が挙げられ、県独自の防疫マップとの併用も行われている。 2.平成22年の口蹄疫発生により、ワクチン接種畜を含め全域の牛・豚が殺処分された宮崎県児湯郡5町(高鍋・新富・木城・川南・都農)では、疑似患畜の発生件数、1戸あたり飼養規模、埋却地確保のあり方によって疑似患畜の防疫日数に地域差が生じた。疑似患畜発生事例の3分の2について共同埋却方式を採用した都農町が、平均防疫日数が最短であった。また、共同埋却地の確保については、地下水湧出などの土地条件を熟知した町職員が選定や地権者との交渉にあたったことも奏功した。公有地の埋却地利用と事後管理(新富町)、集落レベルの初動防疫体制の構築(都農町)は、特定家畜伝染病に対する地域防疫のモデルとなる事例である。 3.北海道では難治性で摘発淘汰の難しいヨーネ病、牛ウィルス性下痢・粘膜病、牛白血病の発生件数が多い。ヨーネ病は、昭和50年代の輸入牛に始まり、継続的な感染が生じている十勝地域で有病率が高い。十勝地域では法定検査が開始される以前からヨーネ病一斉検査が行われている。また全道規模でも市場出荷牛の自主検査が実施されている。牛ウィルス性下痢・粘膜病についてはワクチン接種を奨励しているほか、十勝地域の2町では導入牛に対するアクティブサーベイランスを行い摘発に努めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
農林水産省が開発を進めていた家畜防疫マップシステムの運用開始が平成24年10月であり、同システムの各都道府県による導入状況をアンケート調査によって把握するのは、それから数ヶ月をおいた年度末が適切であると判断した。また同アンケートも半数以上の都府県が未回答であるため、全数回収に向けてさらなる依頼を行う予定である。 また、北海道、岩手、栃木の諸県において、家畜伝染性疾病の地域別発生状況を踏まえた具体的な防疫体制と、農家レベルでの飼養衛生管理の実態、家畜衛生アドバイザーとの連携関係に関する調査を実施する計画であったが、宮崎県における口蹄疫防疫(埋却地確保)の補足調査およびその成果発表に時間を費やしため、北海道で道庁および十勝家畜保健衛生所に対する聞き取り調査を行うにとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、栃木県内において畜産農家を対象に、防疫意識と平時における獣医等家畜衛生アドバイザーとの連携関係について調査し、評価点と改善点のそれぞれを探る。具体的な調査項目は、(1)各種伝染性疾病に対する認識と情報源、(2)自家における伝染性疾病の発生の有無、(3)患畜発生時の具体的対応 (4)飼養衛生管理基準の遵守状況、(5)平時の家畜衛生における獣医師との連携、および疾病以外についての相談事項、(6)近隣における伝染性疾病発生時の地理情報の公開希望、(7)行政の防疫体制への要望である。当該調査は、多数の経営主が参会する部会の総会等において調査票を配布しその場で回収する。 第二に、リスクコミュニケーションの観点から、家畜伝染性疾病の特徴と乳肉の安全性に関する消費者への情報提供のあり方について、口蹄疫およびその他の監視伝染病に関する過去のプレスリリースを分析し、課題を探る。 本年度は家畜防疫マップシステムに見られる地理情報の活用に関する学会報告、宮崎県の口蹄疫防疫の実態に関する紀要論文の執筆を行う。23年度・24年度の調査結果をふまえ、家畜の疾病予防、感染家畜の摘発淘汰、ならびに特定家畜伝染病発生時に迅速に対応しうるローカルな連携とはいかなるものかを考察し、現行のリスク管理体制の見直しをはかるための具体的提案を行うことを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、防疫に必要な地理情報(集落界、家畜飼養頭数、交通路等)を統合・分析するためのGISソフト「ArcGIS」を導入する。調査地域で撮影した畜産農家の衛生管理区域や埋却予定地の写真を関係者に提示するために、タブレットコンピュータも購入する。 本年度の調査および学会発表は首都圏が中心となるが、相応の旅費を必要とする。また報告書作成のための印刷費用を計上する。
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Research Products
(2 results)