2013 Fiscal Year Research-status Report

家畜伝染性疾病に対するリスク管理の地域的実態に関する研究

Research Project

Project/Area Number	23520948
Research Institution	Utsunomiya University
Principal Investigator	松村啓子宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (60291291)
Keywords	地理空間情報 / GIS / 防疫マップ / 埋却地
Research Abstract	平成25年度は、24年度末に実施した都道府県単位の防疫マップシステム導入状況に関するアンケート調査の全数回収と結果分析を継続し、防疫マップ導入時期とリスク要因との相関関係を探るとともに、家畜防疫における地理空間情報活用の課題について検証した。また、宮崎県における口蹄疫埋却地の立地場所、分布密度について、衛星画像による分析を行った。これらの成果は以下のとおりである。１．農業における畜産部門構成比および獣医師1人あたり家畜管理頭数という２つのリスク指標が大きな値を示す道県ほど、2000年代前半までに防疫マップシステムを整備する傾向が認められた。リスク指標の値が相対的に小さい県に対しても、システム開発に対する国庫補助や、動物衛生研究所が開発した防疫マップシステムの稼働が導入契機となり、2004年以降の普及率向上に寄与した。２．防疫マップシステムは、各道府県独自システム（主として2000年代前半）、動物衛生研究所のシステム（2005年）、農水省のシステム（2012年）と開発年代が下るにしたがい、機能性（検索・集計、オルソ画像表示）および利便性（他県での発生にかかわる空間情報閲覧、利用端末の増設）を高め、患畜発生時の迅速な防疫措置を支援するという目的を達成している。今後のシステム改善のポイントは、町丁・大字境界の取り込みと抽出機能の追加、ベースマップの更新、埋却予定地の登録であり、また運用上の課題としては、防疫業務に携わる市町村との情報共有、各部署が管理する空間データとの統合が挙げられる。３．宮崎県児湯郡川南町について、2011年３月撮影の衛星画像（GeoEye-1)より122ヶ所の埋却地を確認できた。3ヶ所以上の埋却地を有する500mメッシュは町北西部に集中している。畜舎に近接した優良農地が埋却地に充てられたこと、生活道路に面し、民家に近接した埋却地も多く、周辺住民への理解を得るのが困難であったことが問題点として指摘できる。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 4: Progress in research has been delayed. Reason 防疫マップシステムの整備・運用に関するアンケート結果の分析に時間を要したため、25年度に実施予定であった、栃木県内の畜産農家を対象とする防疫意識とリスク管理のための連携関係に関する調査を遂行することができなかった。また、平成25年10月以降全国的に豚流行性下痢の発生が続いているなかで、平成26年４～５月に栃木県内で20件近い同疾病の発生事例が報告されていることから、調査項目の見直しを行う必要が生じている。
Strategy for Future Research Activity	第一に、栃木県北部の畜産農家を対象に、防疫意識、日常的な飼養管理衛生、平時における獣医等家畜衛生アドバイザーとの連携関係についてアンケート調査を実施する。各都道府県へのアンケート結果より、埋却予定地の確保や家畜飼養者の防疫意識の向上が防疫体制構築上の大きな課題となっていることから、これらの現状が明らかになるような調査項目の設定を行う。第二に、宮崎県児湯郡における口蹄疫発生時の埋却地に関する空間分析を行う。埋却地の立地場所（道路や民家からの距離）、地目や従前の作付の有無から、埋却地確保に係わる諸課題を明らかにする。この研究成果については、学会でのポスター発表ならびに学術雑誌への投稿を目指す。以上の研究の遂行ならびに25年度までの研究成果をふまえ、家畜の疾病予防、感染家畜の摘発淘汰等のための自主防疫組織が有効に機能し、特定家畜伝染病発生時に迅速に対応しうるローカルな連携とはいかなるものかを考察し、現行のリスク管理体制の見直しをはかるための具体的提案を行って、行政支援や消費者保護に寄与することを目指す。
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding	補助事業期間を延長し、栃木県内の畜産農家に対する調査を実施するため。農家調査に関わる旅費、および報告書の印刷に使用する。