2011 Fiscal Year Research-status Report
農山村における多様な居住実態を踏まえた地域資源のガバナンスの探求
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23520964
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
松尾 容孝 専修大学, 文学部, 教授 (20199764)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 地域変動 / 持続可能性 / 土地管理 / 二か所居住 / 広域ネットワーク / 人文地理 / スウェーデン / Nordic諸国 |
Research Abstract |
当初の研究実施計画では、平成23年度に、「農山村の居住実態」の類型差・地域差について、(1)全国の動向を把握しそれに沿った現地調査地の選定、(2)多様な居住実態に対応した地域資源管理の現地調査、(3)文献と調査をもとにした地域変動の仕組みの考察、(4)分析結果の公表を挙げた。行った実績の概要は次のとおりである。 当初計画では不十分であった、「地域資源」に関して、林野資源の分布・地域差の把握に努めた。この成果刊行物が、次のものである。松尾容孝(2012.3)日本における育林生産特化以前の林野利用図『人文科学年報』(専修大学)42、1-30 上記の(3)(4)に関して、日本の農山村の居住実態の模式的整理、過疎地等の地域支援政策と生活様式の現状の検討を含む次の成果を刊行した。Yasutaka Matsuo,2012, Examining the supporting policies in the light of present lifestyles in depopulated mountain areas in Japan, in Walter Leimgruber, Walter Zsilincsar, Etienne Nel eds., Mountain regions in transformation, Shaker Verlag, Aachen, Germany, 183-207. ISBN 978-3-8440-0930-9 本研究に関連が深い、先進国の農山村や改変を蒙っている地域を対象にした、日本&スウェーデンの学際的研究交流を行っており、その参加発表を5月に奈良で行った。 (2)に関する現地調査を数回実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で記した当初計画の(1)全国の農山村の居住実態の動向把握が不十分にとどまった。(1)が十分に行えなかった理由は、過疎化が深刻な紀伊半島が災害により本調査が困難になったこと、農山村住民が都市部に所有する家やアパート等の資産状況を統計的に把握するのが意外に困難で農山村住民の二か所居住は個別調査を通じて解明する必要が高いことがわかったことによる。紀伊半島の災害復興は順調に進んでいるので、平成24年度は、現地調査、農山村の居住実態の動向を把握するための統計等の分析をともに進めることが可能と考えている。 (2)については、成果の刊行には至っていない。しかし、名古屋大都市圏縁辺部の愛知県北設楽郡(豊根村、東栄町)、東京大都市圏に一部包摂されている東京都西多摩郡奥多摩町について現地調査を数度実施した。大都市圏の影響の程度を念頭において居住実態、地域資源のガバナンスに関する現地調査を行っており、平成24年度25年度に順次成果を刊行していく状況にある。 (3)、(4)の達成度については「研究実績の概要」欄に記したように、2つの成果を刊行し、国際研究集会で1口頭発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」「現在までの達成度」を踏まえ、次の3点を主に進める。3点の内容と方策を以下に記す。 まず、全国の農山村の居住実態、および林野資源をはじめとして近現代に経済的活動として営まれてきた「地域資源」の分布・地域差の2つを把握する。前者は『国勢調査』『農林業センサス』を主たる資料として用いる。後者は、23年度成果で積み残した林野資源経済活動のほか景観や民俗芸能までを射程に、近代統計、文化庁報告書、自治体史誌などを 資料として用いる。 また、上の(2)に関して、成果の学会口頭発表と刊行を行う。具体的には、5月24-26日スウェーデンOsterlen(研究集会)で奥多摩町の居住実態と地域資源のガバナンスについて、8月19-23日クロアチアDubrovnik(IGUコミッション08.27年次大会)で日本の林野資源管理利用の現状と地域差について、8月26-29日ドイツケルン(IGC2012大会のセッション)でインバウンドツーリズムを中心とした地域資源の活用による地域(ロカリティ)形成について発表を行い、学会後に刊行する。10月23-24日には、再生可能エネルギーに関するヨーロッパでの取り組み、日本での取り組みについて講演形式での発表を行う。8月の2発表と10月の2発表資料の収集と成果刊行のため、文献・現地調査を平成24-25年度に行う。 そのうえで、本研究の眼目である、高齢化・過疎化により内生的再生産が困難な地域が多いなか、地域資源のガバナンスを実現しつつ住民を含むステークホルダーの広域ネットワークがいかに構築されるのが、それぞれの資源や地域に即しているのかを解明するための調査を進める。海外の文献をはじめとする文献の渉猟と現地調査、研究者・住民・ボランティア等との社会的ネットワークを一層開拓して、これを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の推進方策に記したように、平成24年度は、海外への学会出張・資料収集、国内現地調査の旅費の使用が最も多くなる予定である。 現地調査では、公共交通機関に依存できないのでレンタカー借用、ガソリン代、資料等の複写などに研究費を使用する。 また、平成23年度に液晶プロジェクターを購入し、それとパソコン、ビデオを持参して、紀伊半島での地域資源活用の状況について、情報発信と情報受信を行い、交流ネットワークを構築しながら地域資源のガバナンスを住民や関係者とともに考え、実践していく方式を念頭においていたが、災害のためこれを断念していた。今年度は、主に8月下旬の発表以降に、これを実施していく予定なので、これに関して研究費を使用する。 成果公表に際しての作図・資料整理等の補助、刊行に伴う印刷費、文献の渉猟や地域情報に関する図書・文献類、地図資料類等の資料代、資料複写費、ソフト費等に使用する。
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Research Products
(4 results)