2012 Fiscal Year Research-status Report
農山村における多様な居住実態を踏まえた地域資源のガバナンスの探求
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23520964
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
松尾 容孝 専修大学, 文学部, 教授 (20199764)
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Keywords | 地域振興 / 林産資源 / ソーシャルキャピタル / 地域社会 / 社会変動 / ツーリズム / 景観 / 持続可能性 |
Research Abstract |
2012年5月24-25日にスウェーデンOsterlenで開催されたソーシャルキャピタルのワークショップに参加し、奥多摩町における江戸時代から現在に至る地域社会の再編とそのなかでの資源の管理・利用の仕組み、ボンディングとブリッジングのネットワークの変化を口頭発表した。現在選集刊行にむけて進行中である。長期的な社会経済変動に対して、地域社会を再編して持続可能性を探求する状況が実証的に示せた点で意義がある。 2012年8月19-23日開催のクロアチアDubrovnikでの国際地理学連合「マージナリゼーション、グローバリゼーションと地域の対応」コミッション年次大会において、日本の森林資源管理の動向、旧来の森林資源利用の衰退・粗放化と新たな資源利用の具体的状況をテーマに口頭発表した。8月26-29日にドイツケルン大学での国際地理学会大会において日本での多様なロカリティツーリズムによる地域振興の種類、取り組みの規定要因、さらに瀬戸内海直島におけるアートツーリズムが抱える制約とチャレンジについて口頭発表した。改稿と刊行に向けて前進させる考えである。 2012年10月23-24日に「再生可能エネルギーの現状と展望-オプション価値の意義-」と題して講演し、その改稿を『専修大学人文論集』第92号にまとめた。海外での再生可能エネルギー開発の精力的取り組みと日本での不活発な状況とその要因分析を行った。日本の環境条件に適した再生可能エネルギーの開発の重要性を具体的に示した。 2013年3月に、江戸時代における林産資源の活用による殖産興業・地域振興の一例として、木地加工活動について、現鳥取県下の2地域を調査地に、実態の復原・再構成を行い、成果を「移動職能集団木地師の活動とそれを支えるメカニズム」『専修大学人文科学年報』第43号として取りまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たな地域資源のガバナンスが、市町村役場(地方政府)と、住民と、Iターン入居者等で住民中心の地域振興活動に主導的ないし役割を踏まえて担える人の協働によって構築されつつある地域社会が増えている。ただし、そのガバナンスが地域社会の持続可能性を保証するほどに安定的に維持・再生産されるか否かは、過疎化の深刻度など、地域存続の閾値条件に左右されるので一義的ではない。 主に主産業の第一次産業や固有の文化景観をてこに地域振興に取り組んでいる各地の現地調査を通じて、上記が明らかになってきた。かかわりを持たなかった人が、特別の思い入れや生きがいを託してある地域に転入居住したとき、村民が受け入れてシナジーによる協働が作動して地域形成が主体的に進行するようになっている。地域アイデンティティを形成ないし創造する程度も高まっている。これらの動向は、一般化すれば、物的基盤が規定する程度が高い前近代・近代産業社会から、知識社会への地域社会変動が進行している諸相とみなせよう。 他方、転入居住者との協働を受け入れない地域もある。既存の地域構造が強固ゆえであるが、内生的な地域形成の弱体化のため外的諸力が部分的に地域を収奪する状況に陥っており、持続可能な地域資源のガバナンスを展望するには至っていない。また、近世期や近代期における地域資源のガバナンスについても調査している。地域社会の規定要因が、現代とどのように異なっていたのか、共通して重要な要素・因子は何かなど、比較考察による知見も重要と考えている。 2011-2012年度を通じて、さまざまな地域資源のガバナンスの実態を現地調査を通じて考察・検討し、上に述べた見通しを持つに至っているので、おおむね順調に進展していると判断できる。2013年度は、事例的な実態調査を補完する分析方法と、研究テーマに対するメタレベルの認識を高めることにも留意したい。
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Strategy for Future Research Activity |
地域資源のガバナンスにおける新たな協働、多様な広域ネットワークがいつごろからどのように形成され、どの程度の頻度で、いかなる交流・リンケージの特色をもつのかについて、同地域の歴史的事実との比較考察と合わせて検討を深めて知見を得る。 このような刷新が発現する地域とあまり発現しない地域の分布・地域差、地域資源の種類による発現地域の相違を検討する。201112年度と同様、現地調査の積み重ねによってこれらの研究を行うとともに、統計その他によるマクロ分析の可能性について、研究史の整理・文献の渉猟・既存統計の探索などによって、検討する。 既存の地域構造が強固であるが、内生的な地域資源のガバナンスが展望できず、地域の一部を外部諸力に収奪されている地域に対して、2010年度の災害のため控えていたが、代替しうる地域資源のガバナンスについて対話を通じた模索を実践して、展望を模索する。そのため、林野資源の活用に関する海外を含む取り組みに関する知見を深め、視覚的・包括的に対話の実を果たせるよう努力する。 本研究課題での3年間の成果の発表、刊行を行う。学術面とともに、地域社会にとって実践上有用な公表のありかたを模索し、実現したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
成果刊行物の刊行および地域社会にとって実践上有用な公表方法の検討とその具体化・技術的サポートに要する研究費の使用、地域資源のガバナンスに深くかかわる海外を含む研究集会への参加・発表と現地での訪問調査に要する研究費の使用、国内各地での多様な居住実態を踏まえた地域資源のガバナンスについてこれまでの調査で手薄な地域構造やガバナンスの形態あるいは資源内容をチェックして補完しうる現地調査を行うのに要する研究費の使用、文献・統計の渉猟に要する研究費の使用が、次年度の研究費の主たる使用となろう。
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Research Products
(6 results)