2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520971
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Research Institution | University of East Asia |
Principal Investigator |
礒永 和貴 東亜大学, 人間科学部, 准教授 (10201922)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳴海 邦匡 甲南大学, 文学部, 准教授 (00420414)
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Keywords | 国際研究者交流台湾 / 国際情報交換韓国 |
Research Abstract |
本年度における最大の研究成果は、熊本藩の正保国絵図に際して行なわれた測量絵図を確認したことである。正保国絵図は、これまで管見の範囲では測量を行なった形跡はうかがい得ない。元禄国絵図作成以前における官撰の測量として注目でき、高精細画像の撮影を行なった。一部については、翻刻を行ない報告をおこなった。熊本県立図書館においては、これまで行方知れずであった多くの絵図を発見することができた。その中で寛永年間に作成されたと考えられ絵図の発見はきわめて重要である。また、滋賀県立図書館において、明治期作成の国絵図の閲覧と写真を入手した。江戸幕府撰の国絵図が明治政府になっても踏襲された事例として注目される。さらに、熊本市立博物館で熊本藩校の時習館において使用された測量器具を確認した。それに加え、時習館の師範やその門人の測量家のネットワークをほぼ確認し、その史料を収集することができた。熊本史学会の大会において講演をおこなった。官撰地図史年表はインターネットによって収集を試みた。今後ネット上に公開をする手筈である。また、朝鮮通信使に関する絵図についても、収集を行ない翻刻ならびに注釈作業を行なった。 海外においては、台湾の故宮博物館に中国の古地図が所在する情報を得た。故宮博物館側の種々の問題で実見した絵図は少なかったが、清朝時代の絵図を十数点を確認でき閲覧した。いずれも宣教師が関与した絵図として注目される。また、国史文献館において台湾総督府の作成した近代地図を総括的に閲覧した。また、現地地調査も実施することができた。明治以降の外邦図の研究についても視点に入れ、近世官撰絵図との史的展開の比較を行ないたい。この点については、朝鮮半島における地図の動向について、雑誌「朝鮮」(朝鮮総督府発効)を検索し、具体的な政策を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本国内の調査については、熊本大学・熊本県立図書館の調査が進展した。しかしながら、台湾での調査については、故宮博物館における古絵図を発見できたものの閲覧許可が下りず数10点について点検するにとどまった。その変わりに、台湾文献館において近代以降に総督府の作成した種々の地図類を総括的に閲覧し、台湾各地の現地調査も実施できた。 国内の文献調査および官撰地図史年表は、インターネットで進めたが、実際には現地において確認する作業が必要であり、この点については進めることができなかった。国内の現地調査が不足した点が研究の遅れの最大の原因である。 後2年間の研究期間において、できる限り現地に赴いて実際の絵図を見て地図史年表の作成を行ないたい。ただし、熊本藩においては測量家を200以上にわたって確認し、その資料を総括的に収集できた点は大きな成果である。今後、これらの測量家の事績を追跡する一方で、官撰地図史の中での位置付けを行なう必要性が認められる。特に、藩校時習館との密接なつながりと同館の測量師範が極めて重要な役割を果たした点についての追及があまりできていない。今後は、官撰絵図史全体と各藩の動向についてより一層の検討が望まれるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、官撰絵図史年表を作成するために、できる限り現地調査を行ない具体的な年表を提示していく。また、熊本藩においては、多くの測量家の事績に関する史料のさらなる発見につとめ、史料集としてまとめることを目標としている。また、測量をともなった肥後正保国絵図についての具体的な測量術について明らかにする。このためには、熊本市立博物館所蔵の測量器具について具体的な調査を実施する必要がある。また、熊本県立図書館で新たに発見した寛永期の国絵図についての検討を行なう。 昨年度収集することのできた朝鮮通信使の絵図については、翻刻及び校訂をすすめ韓国および日本での刊行をめざす方針である。日韓交流の象徴でもある朝鮮通信使の文化的意義を絵図という具体的な視覚史料によって明らかにする意義は大きいものと考えている。また、本年度はベトナムのハノイ国立博物やハノイ大学所蔵の絵図についても視野に入れ研究を進展したいと考えている。 東アジアのの官撰絵図を総括的に把握する一方で、日本、特に肥後藩における絵図史および測量の総括的な実態を解明することによって、新たな絵図史研究の新展開をはかることを目的としたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(7 results)