2011 Fiscal Year Research-status Report
日本の遠洋漁船における外国人出稼ぎ者の多文化コミュニティ形成に関する人類学的研究
Project/Area Number |
23520976
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
風間 計博 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (70323219)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 文化人類学 / 出稼ぎ / 遠洋漁業 / 多文化コミュニティ / キリバス |
Research Abstract |
本研究では、特殊な労働・生活環境である遠洋カツオ・マグロ漁船における外国人出稼ぎ者に着目する。そして、文化的背景の異なる漁船員や日本人の漁業関係者との間の社会関係構築と維持、軋轢の処理のあり方等を把握したうえで、多文化的コミュニティの存続機序を明示することを目的とする。研究初年度においては、まず基本情報の収集を行う。 まず本研究の理論的方向性を明確にするべく、文化的他者間の接触に関わる文化人類学・社会心理学・認知科学の論文・書籍を収集し、基礎的文献研究を行った。また、研究対象のおかれた社会・経済的概況を明らかにする必要があるため、日本の海面漁業に関する統計、法律、歴史等の資料を収集した。 さらに、実地調査によって、一次資料の収集を行った。具体的には、日本の遠洋カツオ・マグロ漁船に出稼ぎに来ている外国人漁船員の雇用状況を把握すべく、静岡県焼津港において、日本人漁業関係者ならびにキリバス人漁船員から聞き取り調査を行った。遠洋漁業においては、2000年代半ばの原油高騰に伴って減船措置がとられ、キリバス人漁船員の雇用は縮小された。しかしその後、雇用状況に大きな変動はないことが分かった。一方、インドネシア人の漁船員が選好される場合があることが示唆された。また、キリバス人とインドネシア人の間に目だった交流は見られず、そのため深刻な軋轢も生じていないという情報を得た。加えて、東日本大震災後、自ら下船を希望して帰国したキリバス人が、少なくとも3人いることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論的考察を行うための文献ならびに漁業関連文書等を購入した。焼津漁港におけるキリバス人漁船員ならびに日本人漁業関係者に面談することができた。文書資料および実地調査資料を得ることにより、研究初年度の目標である基本情報の収集が概ね達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究遂行にとくに大きな問題は生じていないため、次年度も継続して研究を推進していく。初年度の研究で得た基本情報に加えて、さらなる文書資料や実地調査資料を積み増すように努める。焼津をはじめとした遠洋カツオ・マグロ漁業の拠点漁港において、外国人出稼ぎ者への面談等、引き続き実地調査による資料収集を行う。また、書店等を通じて入手し難い二次資料の収集を行うため、水産関係の文書を所蔵する諸機関を訪問する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内各地の拠点漁港等への実地調査や、水産関係文書を所蔵する諸機関への訪問のため旅費を支出する。並行して、漁業関連の文書資料、文化人類学・社会学・社会心理学・認知科学等の文献購入や複写費に支出し、文献研究の成果を一次資料分析に活かすよう試みる。 なお、様式F-6-1の「次年度使用額」に約20万円の記載がある理由は、東日本大震災被災地の漁港(石巻および女川)への視察において、大学内の獲得資金を活用することができたため、本研究の旅費を使用する必要が生じなかったことによる。また同様に、消耗品の購入を学内資金である程度賄うことができたためである。この次年度使用額については、平成24年度の研究における資料収集の強化に活用する。
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Research Products
(1 results)