2013 Fiscal Year Annual Research Report
日本の遠洋漁船における外国人出稼ぎ者の多文化コミュニティ形成に関する人類学的研究
Project/Area Number |
23520976
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
風間 計博 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (70323219)
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Keywords | 文化人類学 / 遠洋漁業 / 出稼ぎ / キリバス |
Research Abstract |
本研究では、特殊な労働・生活環境である遠洋カツオ漁船および巻き網漁船における海外からの出稼ぎ労働者に着目する。そして、文化的背景の異なる出稼ぎ者と日本人漁業関係者間、および出稼ぎ労働者間の社会関係の構築と維持、軋轢の回避や処理のありかたを把握し、多文化コミュニティ存続維持の機序を考察する。 本年度は、1990年代中葉以降、日本の遠洋漁船に出稼ぎ者を数多く送り出してきた、キリバス共和国に渡航した。キリバスの首都タラワにおいて、1)漁船員養成のための訓練校(Fisheries Training Centre)での教育現場を視察し、2)出稼ぎ者を日本に送り出すエージェント(半官半民会社および民間会社)で聞き取り調査を行った。 また、東京において、日本側の受け入れを担う民間の人材派遣会社代表から、キリバス人受け入れの実態について聞き取り調査を行った。さらに、カツオ船および巻き網船が水揚げを行う静岡県焼津漁港を訪問して、日本人の漁業関係者、人材派遣会社のキリバス人社員等から、漁船内や入港時、出入国時のトラブル等について、具体的な情報を収集した。加えて、焼津漁港内に停泊中の漁船を訪問し、キリバス人漁船員やインドネシア人漁船員から、船内での労働および生活に関する聞き取り調査を行った。 たいていの出稼ぎ漁船員は、良好な船内生活を送り、問題なく労働に従事している一方、病気や事故、人間関係のトラブルは不可避的に起こっている。とくに、漁船が停泊中の漁港近辺における飲酒時にトラブルが頻発するという。しかし、船内において、日本人漁船員、キリバス人、インドネシア人、ミクロネシア人(ポーンペイ人等)の間で社会関係に亀裂が入ることは稀である。言語の障壁等により、漁業労働時以外に、コミュニケーションを十分にとることが出来ない状況が、むしろ表面的な共存を可能にしていると推察される。
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Research Products
(1 results)