2011 Fiscal Year Research-status Report
開発から実践へ-安心院農村民泊による地域再生のモデル化と移植に関する政策的提言
Project/Area Number |
23520978
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
前川 啓治 筑波大学, 人文社会系, 教授 (80241751)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
|
Keywords | 開発 / 地域づくり / 農村民泊 / 観光 / アクター / 規制緩和 / モデル化 / 安心院 |
Research Abstract |
安心院における農村民泊のフィールド調査を行い、将筑波山麓地域への移植を前提にそのモデル化の枠組み作りを行った。その過程から、以前の予備調査以降新たな留意点があ浮かび上がった。 安心院の農村民泊の成功の鍵は、一連の規制緩和である。食事を伴う宿泊は種々の法に拘束され、農家規模では対応できない施設の充実を伴う。安心院では旧安心院町役場を起点に、官民一体となってこうした種々の規制の緩和を進めてきた。一村一品運動の主導者であった知事の理解もあり、大分県もその推進を後押しし、規制緩和は実現され、農村民泊は新たな旅のスタイルの一つとなりつつあり、過疎化しつつあった村の地域づくりのお手本ともなった。ただ、こうした官民一体の推進体制による展開から次の段階として、民による、より主導的な展開が期されるなか、官民両者の方向性の違いもみられる。農村民泊に直接関わる村民と村全体の観光を考える役所の見解の相違とも考えられるが、経済行為の主体性の問題として捉えられ、今後のモデル化の際にこうした行政と民間の関わりという点を意識して進める必要を見出した。 また、同様の試みを進め、注目を浴びている石川県能登地方の春蘭の里の農村民泊の組織化もフィールド調査した。春蘭の里では、官はむしろそうした民の成功をモデル化し、その応用として能登地方全域にそうした展開を進めたい意向であるが、今後そうしたアプローチが功を奏するかを見極めることが一つの課題となった。 なお、研究代表者はつくば市の観光基本計画策定委員長を務め、より広い視点から観光の活性化を検討する立場から、農村民泊と合わせて行う観光施策の可能性を求め、フットパス運動の展開、遺跡を利用した観光展開、障害者を対象とした観光、養生ツアー、ジオパークの観光的展開、国立公園の施設の利用、科学博物館等の科学と伝統の融合といった各地の様々な地域づくりの実態調査を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はすでに開始されてから十年以上が経ち、その手法が確立されてきた安心院における農村民泊のフィールド調査を行い、将来の筑波山麓地域への移植を前提にそのモデル化の枠組み作りを行った。その過程から、以前の予備調査以降新たに見えてきた留意点があきらかになった。 このことに関連するが、最近とくに注目を浴びている石川県能登地方の春蘭の里の農村民泊の組織化もフィールド調査した結果、安心院単独の農村民泊モデルより、春蘭の里の農村民泊の展開の方法も統合し、農村民泊のより普遍的なモデルを作成することの重要性を見出し、その新たなアプローチの枠組み作りを行ってきた。各地の種々の観光まちづくりの事例をフィールドワークし、農村民泊との接合可能性を探った。
|
Strategy for Future Research Activity |
安心院と春蘭の里の統合的農村民泊モデルを移植する先として前提としている筑波山麓地域と南アルプス地域の生態的・歴史的・文化的相違と共通性を確認し、各々の地域の地域づくりのアクターの地域の捉え方と地域づくりの考え方を把握して、どのような移植の方向性がよいかを探ってゆく。 筑波山麓地域のアクターに関しては、地域の文化資源についての語りを視聴覚データ化し、保存し、また将来インターネット・ツールなどへの視聴覚情報の提供への応用の基礎を作っておきたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
安心院と春蘭の里の農村民泊の統合モデルを構築し精緻化するために、現地調査を引き続き行い、同時にモデルの移植先である筑波山麓地域と南アルプス地域のアクターへの聞き取り調査を行い、農村民泊の導入の具体的な手法と組織化の方向性を定めてゆく。このためのフィールドワークに、研究費を旅費として充てる。 なお、昨年度の研究費の残額分は旅費に充てる予定であったが、年度末で執行できなかったため、今年度に繰り越し、今年度初めに旅費として執行する。引き続き、農村民泊と合わせて行う観光施策の可能性を求め、各地の様々な地域づくりの実態調査を行う予定であり、旅費として執行する。 また、筑波山麓地域のアクターによる地域の文化資源についての語りの視聴覚データ化に際し、専門家を招き、講演・指導を依頼する予定であり、そのための費用を謝金として執行する予定である。
|