2011 Fiscal Year Research-status Report
マダガスカル北西部における法と取り決めの節合面をめぐる共同性の社会人類学的研究
Project/Area Number |
23520981
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
深澤 秀夫 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (10183922)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 社会人類学 / 植民地法制度 / 集団性 / マダガスカル / Tsimihety / フクヌルナ |
Research Abstract |
2011年度は、2011年7月24日~9月28日および2012年3月1日~3月19日の2回、マダガスカル現地において実地調査と文献資料調査を実施した。前期調査では、首都アンタナナリヴの国立公文書館・国立学士院図書室において、19世紀イメリナ王国期の法制史および19世紀末からのフランス植民地期の法制資料の閲覧および収集を行うと共に、マジュンガ州北西部の農村地帯において現在の末端行政単位であるフクンターニの意思形成と執行に関する資料を、それらの集会場面の発話の採録を中心に収集した。後期調査では、首都アンタナナリヴにおける文献資料閲覧と収集を継続すると共に、マジュンガ市内において、2012年1月~2月の裁判官組合のストライキ期間に頻発した地域住民による非合法な犯罪容疑者に対する私的制裁措置である<人民裁判>について聞き取り調査を実施した。 2012年1月~2月の期間にマジュンガ市内で複数発生した<人民裁判>は、警察官と裁判官との偶発的係争に端を発した裁判官組合によるストライキが直接的な要因となっている。しかしながら、マジュンガ地方の農村地帯においても、フクンターニないしフクヌルナを単位として、犯罪容疑者に対する制裁措置が以前から行われており、犯罪容疑者の殺害の裁定であったとしても、警察や憲兵隊は不介入を原則としている。また、ムラの取り決めに対する不服従者や邪術の行使者は、あいさつ以外の一切の社会的付き合いを絶つ<村八分>の処分を課されるが、この制裁措置は個人に対してではなく、個人をとりまく家内的領域の人びとを対象としてなされている。<人民裁判>とは、国家とそれを構成する集団性との関係が成立せず、さらにムラとそれを構成する個人をめぐる家内的領域の関係にも包含されない状況下において生じる境界的な現象ではないかとの見通しをたて、さらに実地調査および文献資料調査を継続する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたマダガスカルにおける現地調査および国立公文書館と国立学士院図書室における資料調査を7月~9月と2012年3月の2回実施することができた。それにより、フクンターニ(行政村)における集会の討議に関する録音資料およびフランス植民地期の法制度に関する文献資料を収集することができた。また、国立アンタナナリヴ大学考古-芸術博物館所属の民族学専攻の研究員との面談に基づき、調査地の裁判慣行についての情報を得ることができた。 その一方、フランス植民地期の原住民司法制度下における具体的な裁判の判決文書資料の保管・所蔵場所については、現在なお探索中である。 また、2011年末からの裁判官組合のストライキに調査期間中に遭遇したことにより、<人民裁判>についての聞き書き資料をマジュンガ市内において入手することができ、本科研費研究主題に関する新たな課題を見出した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.)マダガスカル北西部の農村地帯のムラにおける集会の会話資料採録の継続およびマダガスカル北西部の農村地帯のムラにおける成文化された取り決め文書資料の収集。 2.)マジュンガ市内における<人民裁判>についての聞き書き資料の収集。 3.)マダガスカルの国立公文書館・国立学士院図書室における法制度および裁判資料収集の継続。 4.)マダガスカルの国立文明研究所・国立考古-芸術博物館所属所員との情報収集および交換の継続。 5.)フランス国立海外公文書館・国立公文書館・国立東洋語学院資料室におけるフランス植民地期裁判制度および法制度に関する文書資料の閲覧と収集。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年の7月~9月、2013年の2月~3月に下記の調査を実施するため、研究費を使用する。 1.)フランス国立海外公文書館・国立公文書館・国立東洋語学院資料室におけるフランス植民地期裁判制度および法制度に関する文書資料の閲覧と収集のための旅費。 2.)マダガスカル北西部の農村地帯のムラにおける集会の会話資料採録およびマダガスカル北西部の農村地帯のムラにおける成文化された取り決め文書資料の収集のための旅費。 3.)マジュンガ市内における<人民裁判>についての聞き書き資料の収集のための旅費。 4.)マダガスカルの国立公文書館・国立学士院図書室における法制度および裁判資料収集、国立文明研究所・国立考古-芸術博物館所属所員との情報収集および交換のための旅費。
|