2012 Fiscal Year Research-status Report
マダガスカル北西部における法と取り決めの節合面をめぐる共同性の社会人類学的研究
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23520981
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
深澤 秀夫 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (10183922)
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Keywords | 国際情報交流 / マダガスカル / フランス |
Research Abstract |
2012年7月末から8月上旬にかけて、フランスの海外公文書館および国立図書館において、フランス植民地時代の法制度の整備過程について、文献資料を基に調査を行った。イメリナ王国の成文法をフランス植民地制度において臣民に対する法制として適用したフランスの法務官の法思想とマダガスカルの在来の制度や習慣に対する理解の程度について、調査研究を進めている。また、マダガスカルとインド洋の民族研究を行っているレユニオン大学文学部の教員とパリで会い、フランス植民地下のマダガスカルの法制度をめぐり情報交換を行った。 2012年8月中旬と9月下旬および2013年3月上旬から中旬には、マダガスカルの首都アンタナナリヴの公文書館および国立学士院において、同じくフランス植民地時代の法制度の整備過程を文献資料を基に調査を行った。また、イメリナ王国の成文法の読解に必要な、イメリナ王国時代の政治制度についての文献調査も実施した。さらに、国立文明研究所・考古-芸術博物館の研究員と、研究員自身の調査地における村落制度の運営状況についての情報交換を行った。 2012年8月下旬から9月中旬にかけて、マダガスカル北西部の農村地帯において、イメリナ王国時代もしくはフランス植民地時代に導入されたと推測される村落制度、フクヌルナとその現代的形態であるフクンターニの運営過程についての臨地調査を行った。村の集会の録音資料を収集し、その会話分析から村の運営をめぐる合意過程の形成についての調査を進めている。 2012年8月中旬および2013年2月下旬から3月上旬にかけては、北西部の都市マジュンガにおいて、市を構成する地区の中での治安維持機能、とりわけ超法規的措置である<人民裁判>についての調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フランス植民地形成期のマダガスカルにおける法制度を整備したフランス人法務官については、フランスとマダガスカルにおける文献調査から書誌情報が集まり始めている。今後その書誌情報の分析を進めれば、マダガスカルにおけるイメリナ王国からフランス植民地への法制度の節合過程を相当程度明らかにすることができるだろうとの展望を得ている。その一方、同作業を進める中で、当該の法務官が当時のフランス法曹界における重鎮の一人であることがわかり、その人物自身の当時のフランス法思想における位置づけを明らかにする必要があると考えている。 マダガスカル北西部の農村における臨地調査からは、現在進行形のむらの問題に対する構成員間での合意形成過程を、会話分析を基に進めている。むらの制度的な概要については把握しているものの、個々の成員間における合意形成の過程の分析については試行錯誤の状態であり、さらなる臨地調査に基づく資料の蓄積が必要である。 マダガスカル北西部の都市マジュンガにおいては、超法規的措置である<人民裁判>についての調査を行っている。その調査からこの民衆の暴力行使が、国家の法制度とむらの組織の双方の経験から生じているとの見通しをえたが、これについてはさらなる確認のための調査が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年7月末~8月上旬にかけて、フランスのパリの国立図書館において、フランス植民地期の法制度の整備過程およびそれを整備したフランス人法務官の当時のフランス法曹界における位置づけを明らかにする文献資料の調査を実施する。 2013年8月中旬と同9月下旬には、マダガスカルの首都アンタナナリヴにある国立公文書館・国立学士院・国立図書館において、フランス植民地期の法制度の整備過程およびそれを整備したフランス人法務官についての上記同様の文献資料の調査を行う。 2013年8月中旬から下旬にかけて、マダガスカル北西部の都市マジュンガにおいて、市を構成する地区における治安維持機能と超法規的措置<人民裁判>について臨地調査資料を収集する。 2013年8月下旬から9月中旬にかけて、マダガスカル北西部の農村賃貸において、むらの集会の録音資料の収集を中心とする臨地調査を実施し、構成員間における合意形成過程について明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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