2013 Fiscal Year Annual Research Report
現代カナダの先住民社会における世襲の意義と「政治」に関する人類学的研究
Project/Area Number |
23520984
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
立川 陽仁 三重大学, 人文学部, 准教授 (20397508)
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Keywords | カナダ先住民 / クワクワカワクゥ / 政治 / 世襲リーダーシップ |
Research Abstract |
カナダでは、19世紀半ばに先住民社会に対して平等主義、民主主義的な政治的プロセスが導入された。しかし近年、とくに20世紀の後半になり、旧来世襲によるリーダーが存在していた社会で世襲制の復権が確認されている。この研究ではクワクワカワクゥという先住民族を対象に、旧来から存在した世襲のチーフと民主化によって新たに誕生した投票によって選ばれたチーフの実践、イデオロギー、戦略などを分析した。 まず、同社会で実際に民主主義的な政治手法が導入されたか、導入されたならそれはいつごろか、民主主義的な手続きで選ばれた政治的リーダー(選出チーフ)がどれくらい存在するか、世襲チーフは実際に選出チーフと共存しているのか・・・などの実態の調査をフィールドワークの手法でおこなった。その上で、同社会には、1950年頃から選出チーフ制度が導入されており、ほとんど(16集団中13)で選出チーフが確認されているが、1980年頃から明らかに世襲チーフの力が増しており、現在では世襲チーフの配下に選出チーフがおかれているヒエラルキーが確認された。 つぎに、いかにして世襲チーフがみずからの権威を復権させたかという問のもとで、その戦略を歴史的に分析した。その戦略は、おもに交換の原理を利用した経済的な次元においておこなわれていることがわかったが、同時にいかに「世襲のほうが上」という言説やイデオロギーを構築しているかという、言説面での戦略も明らかになった。 ただし、本研究では、上記のような「いかに」という面は多々明らかになったが、「なぜ」に相当する部分、つまり、なぜ世襲のリーダーシップが平等主義的で能力主義的なリーダーシップに勝るのかについては、明白な回答が得られなかった。
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