2011 Fiscal Year Research-status Report
祭り囃子のデジタルデータ化と比較研究の試み-徳島県を事例として
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23520987
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
高橋 晋一 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 教授 (10236284)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 祭礼 / 民俗 / 囃子 |
Research Abstract |
本研究の目的は以下の2点である。1)徳島県各地の祭礼の「お囃子」のデジタルデータ化を行い、そのデータを比較検討することを通じて、県下の祭り囃子が持つ構造性の特質を明らかにする。2)お囃子の地域的分布を検討することを通して、地域における「お囃子文化」の展開過程を明らかにする。平成23年度は、主に県南地域を中心として、文献調査に加え、30地点あまりの祭礼の現地での聞き取り・観察調査を実施した。現地で収集した文献データ、聞き取りデータ、映像・画像・音声データを分析することにより、地域における「お囃子のシステム」のかたちを抽出した。その結果、1)県南地域においては、山車の基本形態は引くタイプの「だんじり」であり、お囃子の基本構成は大太鼓1・小太鼓2・鉦2・大鼓2・小鼓2の9人編成であること、2)1つの祭礼の中でも、その場面展開に応じて複数のお囃子のパターンを組み合わせていること、3)基本的なお囃子は大太鼓・小太鼓・鉦で奏されるが、「拍子」と呼ばれる長く複雑なお囃子があり、それはすべての鳴り物の掛け合いのもとに奏されること、3)近隣地域には、類似のお囃子のパターンが見られ、伝播関係が想定されること、4)県南地域には「祇園囃子」と呼ばれる、前記の鳴り物の基本構成に加えさらに三味線と歌が入るお囃子が分布していること、などが明らかになった。平成24年度実施予定の、県北を中心とした地域の現地調査をふまえ、県内全域のお囃子の地域的展開を明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、徳島県各地の祭礼の「お囃子」のデジタルデータ化を行い、そのデータを比較検討することを通じて、県下の祭り囃子が持つ構造性の特質を明らかにする。また、お囃子の地域的分布を検討することを通して、地域における「お囃子文化」の展開過程を明らかにすることを目的としている。平成23年度には、文献調査、および県南地域を中心とした現地調査の実施を計画していたが、一部地域を除きおおむね調査を実施することができ、また、調査で収集した文字・画像・動画データを整理し、それらをもとに、お囃子の構造・地域性の両面から県南地域の祭礼のお囃子の特質の分析を行った。以上のことから、研究計画はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度も、引き続き祭り囃子に関する文献資料、徳島県の祭礼文化に関する文献資料を収集、精読する。この年は県北(吉野川上流域)地域のお囃子に関する調査を集中的に実施する。前年度の調査結果とも比較を行いつつ、お囃子の地域性を明らかにしていく。基本的な調査方法は前年度と同様である。事前に現地の関係者に、お囃子の種別と奏法、使い分けなどに関する詳しい話を確認した上で、祭礼当日は現地でお囃子の打ち子の人数・衣装・鳴り物の種別・配置等の情報を観察調査により確認、さらに移動する山車に同行する形でお囃子の演奏の様子をビデオ撮影、基本的な鳴り物の打ち方を記録するとともに、場所による打ち方の使い分けを確認する。これらの収集データを分析することにより、県北地域におけるお囃子のタイポロジーが見えてくるものと思われる。さらに前年度に実施した県南地域での調査データとあわせて分析することにより、より広域におけるお囃子のパターンの分布状況が見えてくる。また、県外との文化交流が徳島県の祭り囃子に及ぼした影響を検討するため、隣接する香川県、愛媛県、高知県の祭り囃子についても文献調査、現地調査を平行して行い、相互の関連性を探りたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、物品費(調査現場でデータを収集し、整理・分析するための機材やソフト、消耗品、祭礼のお囃子やその分析方法に関する文献)、旅費(現地での聞き取り調査・観察調査、文献資料収集)、謝金(調査データの整理の補助)に充てる予定である。なお、平成23年度研究費の一部を次年度に繰り越す形になったが、これは主に時間の制約や先方の都合などにより現地調査に行くことができなかった地域があったことによるもので、これら地域の現地調査は、平成24年度に合わせて実施することとしたい。
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