2011 Fiscal Year Research-status Report
地域の生存戦略と「日韓交流」:近現代対馬における交通・接触・他者表象
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23520988
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
村上 和弘 愛媛大学, 国際連携推進機構, 准教授 (40363262)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 対馬 / 日韓交流 / 交通 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近現代対馬における日韓交流の実態調査を通じ、人々が地域の歴史性や特色をどのように利用してきたかを明らかにすることで、生存戦略としての「交流」現象の立体的解明を図ることにある。 平成23年度はまず、従来蓄積してきたデータおよび4月以降新たに得られた知見に基づき、6月に「日本文化人類学会第45回研究大会」(於法政大学)において学会発表を行った。 次に、主調査対象の一つである「厳原港まつり対馬アリラン祭」および「朝鮮通信使行列」パレードを中心に、対馬における現地調査を計3回実施した。第1回は7月に「アリラン祭」の準備状況を調査するとともに、近年、観光資源化が図られつつある地蔵盆の参与観察調査を実施した。第2回は8月に「アリラン祭」および中心的イベントである「朝鮮通信史行列」パレードの参与観察並びに関係者へのインタビューを実施した。第3回は11月に対馬で開催された「朝鮮通信使ゆかりのまち全国大会 対馬大会」に参加し、朝鮮通信使をキーワードとする地域連携の取組み状況を調査した。また、6月には岡山県牛窓町における「朝鮮通信使」を利用した地域振興の取り組みを視察した。これらの調査を通じ、対馬における「朝鮮通信使」の利用実態についてデータの蓄積を図ることができた。また、対馬以外の地域における取り組みについても一定の知見を得るとともに、関係者の面識を得て、今後、調査を行う上での基礎的な関係を構築することができた。 その他、2012年1月には国会図書館にて、戦後、対馬-韓国間で行われていた「変則貿易」の資料を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記したとおり、おおむね研究計画通りに進行している。 「研究実施計画」記載の対馬北部における調査は若干進行が遅れているが、別研究課題の一部として短期調査を実施しており、次年度以降、充分に回復可能である。一方、「平成23年度愛媛大学外国派遣研究員」に採択された結果、韓国における研究状況の把握・基礎資料の収集を実施することができた。 これらを総合的に勘案した結果、「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の遂行に際しては、何よりもまず現地調査の実施、そして関係者との信頼関係の構築・維持が重要である。資料の多くが文献化・記録化されておらず、また、「国境離島における国際交流」について語ること自体が社会的・政治的影響を受けやすく、当事者にとっては発言に慎重にならざるを得ないテーマでもあるためである。そこで機会を捉えて現地を訪問し、信頼関係の構築・維持を図るとともに、直接、各種の活動状況を観察・記録する必要が生じる。「次年度の研究費の使用計画」にも記したとおり、機会があるたびに現地に通い、活動に参加しながら関係者との聞き取りを重ねることで、本研究計画を推進していく所存である。その一方で、文献資料の収集も継続する。上述したとおり文献化された資料は多くないが、それでも新聞(地方版)の掲載記事などを丹念に集めることで、戦後の交流実態については一定の資料蓄積が可能であるとの感触を得ている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「次年度使用額」が108,916円生じたが、これは「平成23年度愛媛大学外国派遣研究員」に採択された結果、対馬での現地調査期間を当初計画よりも短縮したためである。これは平成24年度における現地調査の充実にあてる予定である。 具体的には、まず5月の「2012釜山朝鮮通信使祝祭」に、対馬からの参加者の一員として同行し、「朝鮮通信使」を用いた国際間の交流実態について参与観察調査を行う。次に、夏季に「定点観測」対象として「厳原港まつり対馬アリラン祭」の参与観察および関係者インタビューを行う予定である。さらに、夏季もしくは冬季に、対馬北部における交流実態の調査を実施する。戦前期の実態に関する聞き取り調査に加え、現行の釜山-対馬航路の寄港地である比田勝地区における現状調査も実施する予定である。 また、他の時期は資料収集を行うとともに、おもに高度成長期に「本土」へ渡った対馬出身者の親睦団体を訪問し、聞き取り調査を行う予定である。
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Research Products
(1 results)