2013 Fiscal Year Annual Research Report
地域再構築における中高年女性の伝統手芸活動と民俗技術の多様化
Project/Area Number |
23520989
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
坂元 一光 九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (20150386)
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Keywords | 民俗技術 / 初節句行事 / 観光資源 / 地域学 |
Research Abstract |
本研究では福岡県柳川地域に伝わる女児初節句の吊るし飾り(「さげもん」)制作を民俗に埋め込まれた技術的実践の視点から取り上げ、それが観光資源に活用されることで伝統手芸活動の活性がうながされ、結果として地域の伝統文化の創造的な継承および中高年期の女性の生活の質向上に積極的な役割を果たしている実態を明らかにした。柳川地域ではさげもん行事の観光資源化やさげもん制作の趣味・学習資源化によって、鞠や手芸細工の制作活動が年間を通して活発に行われるようになり、社会の変化に合わせた地域独自の、あるいは女性独自の民俗技術の実践が見られるようになっていた。 また類似の習俗を継承し同じく観光資源として活用している静岡県伊豆稲取(「雛のつるし飾り」)と山形県酒田市(「傘福」)の事例との比較検討を通して、柳川における女子教育を通した手芸知識の普及とその民俗技術化の過程を跡づけるとともに、制作対象や目的を異にする様々な手芸グループによって生み出される民俗技術の多様な展開とその実践のダイナミズムが伝統習俗の今日的継承につながっていることを指摘した。 さらに比較の対象として取り上げた酒田市商工会議所女性会による伝統傘福の復興事業に関しては、組織の記念事業として伝統傘福の再創造に取り組んでいた女性たちが次第に傘福の習俗調査や古傘福の修復・復元などの自主的な文化探求活動を展開していく過程を追うことで地域振興事業が市民主体の地元学/地域学の実践や学びへと接続しうる可能性を見出した。 以上の成果に関しては、学術論文や学会発表の形だけでなく柳川市(平成25年)および酒田市(平成24年)において地元自治体や商工会及び研究団体等が主催する市民シンポジウムの招待講演やパネリストを引き受けることで、地元市民や関係者に対する研究成果の社会的還元をおこなった。
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