2011 Fiscal Year Research-status Report
海洋生物観光の実践現場における生態リスク意識と当事者参加型の予防的資源管理体制
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23520993
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
市野澤 潤平 宮城学院女子大学, 学芸学部, 准教授 (10582661)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ダイビング観光 / 環境保護 / 職業実践 / 不確実性 / 沖縄 / タイ |
Research Abstract |
2011年度は、沖縄(7月14日~19日)およびタイ(12月24日~1月10日)において、ダイビング・ツアーを実施している観光業者を調査対象として、その業務の実際について参与的な調査を行なった。調査地としたのは、タイ南部のプーケットを中心とするアンダマン海、首都バンコクから日帰り圏にあるビーチリゾートのパタヤ、沖縄本島の恩納村である。 調査においては、バンコクと沖縄の複数のダイビング事業者に対して、その業務内容の詳細を明らかにするためのインタビューを行った。さらに、調査者が観光ツアーに実際に同行して、そこでの業務遂行がいかになされているかを綿密に観察した。それらの調査を通じて、ダイビング事業者(特にダイビング・ガイド)がその業務において直面する不確実性に関して、(1)ダイビング客の安全管理、(2)野生の海棲生物を見せることに関わる困難、という二種類への不確実性への対処が、彼らの業務上の関心において大きな比重を占めていることを明らかにした。さらに、そうした喫緊の不確実性への対処を優先させるという業務姿勢があることが、事業運営全体のなかでの生態系への配慮を犠牲にする結果につながる傾向が強いことを見いだした。これらの事実は、ダイビング観光の実践による環境への直接的な負荷を軽減していくためには、事業者・現場従業者たちの環境倫理意識に訴えるのみでは不十分であるということを示唆するものである。 加えて、日本国内における補完的な調査として、東京や名古屋のダイビング観光を扱う旅行代理店、ダイビング客などへの聞き取りを行い、ダイビング客たちの旅行行動や環境保護に関する意識についての情報を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画においては、タイ、沖縄、御蔵島において現地調査を行い、それぞれの結果を比較検討することが予定されていた。しかしながら、東日本大震災によって発生した諸問題への対応に忙殺された結果、現地調査の規模を縮小・短縮せざるをえず、特に御蔵島の調査については、実施そのものを見送ることを余儀なくされた。 研究目的に掲げた着眼点のうち、職業実践における不確実性とリスクにダイビング事業者がどう対応しているのかという点については、調査データの蓄積が効果的に行えた。また、ダイビング観光産業の全体構造についても、詳細な見取り図が描けつつある。これらの点から、現地調査については遅れを来しているが、分析・考察については、一定の成果が得られたと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2001年度は東日本大震災の影響により縮小を余儀なくされた現地調査については、2012年度以降は既に調査経験のあるタイでの調査の比重を高めることにより、作業効率を上げる。2012年度は、複数回のタイ調査を実施し、調査データの密度と深度の向上に努める。特に、ダイビング観光事業者たちの職業実践についての参与的調査を徹底して、環境倫理の視野を越えて、事業者たちの環境に対する接し方について、より包括的かつ詳細な理解を得る。可能であれば、タイにおける調査データを踏まえて、必ずしも沖縄・御蔵島に限定せず、もっとも効果的な比較検討が行える調査地を選定して、現地調査を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2011年度は調査が縮小された結果、278,584円の繰越金が生じた。2012年度配分の1,200,000に繰越金を合わせて、調査旅費および物品購入費として使用する。 主たる調査として、ダイビング観光の現地調査(タイ)を3回実施する旅費として、計80万円を予定している。 国内調査旅費として、沖縄への調査に20万円、また国内の旅行代理店、ダイビングショップ、ダイビング関連のメディア関係者などを対象とした調査旅費として15万円を充てる。さらに、国内における海洋生態学などの専門家との打ち合わせのための旅費として、12万円を使用する。 加えて、調査データ整理に必要なパーソナルコンピューター一台(20万円)の購入を予定している。
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