2013 Fiscal Year Annual Research Report
海洋生物観光の実践現場における生態リスク意識と当事者参加型の予防的資源管理体制
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23520993
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
市野澤 潤平 宮城学院女子大学, 学芸学部, 准教授 (10582661)
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Keywords | ダイビング観光 / リスクの資源化 / 環境保護意識 |
Research Abstract |
2011年度から13年度にかけて、主にタイにおいて、ダイビング業者を調査対象とした2-3週間程度の参与的な調査を、計8回にわたり実施した。加えて、日本国内のダイビング関連事業者へのインタビュー調査も複数回実施した。 参与的調査においては、複数のダイビング事業者に対して、その業務内容の詳細を明らかにするためのインタビューと、観光ツアーやダイビング・ライセンス取得講習に実際に同行しての調査を行った。それらの調査を通じて、ダイビング事業者(特にガイド)が直面する、①ダイビング客の安全管理、②野生の海棲生物を見せることに関わる困難、③長期的な生態系リスク、という課題への対応がどうなされているのかを明らかにしたうえで、ダイビング業界の構造やビジネス実践との関わりについて、考察を深めた。 結果として、ダイビング業界においては、(潜在的な)消費者に事故リスクを知らしめた上で、当該リスクの軽減手段(すなわちガイド業務や各種のライセンス講習など)を販売するという、いわば事故リスクの資源化が、中心的な職業実践となっていることが、明らかになった。ダイビング観光業務において、事故リスクへの対応は、海棲生物との遭遇における不確実性への関心よりも優先する。また事故リスク(の管理)は、短期的な売り上げの大小に結びつく資源であるが、環境(生態系)が減衰するリスクは、それよりもはるかに長期的なスパンにおいて考えられる事象である。このような、考慮すべきリスク/不確実性の、認識される深刻度・重要度および時間スパンの違いが、職業実践の現場における、リスク対応への優先度の違いを生んでいるのではないかという、示唆が得られた。すなわち、ダイビング・ガイドたちは、長期的な生態リスクに関心がないというよりも、その職業実践において、より短期的なリスク管理に注力せざるを得ない、構造的な理由が存在すると考えられる。
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