2013 Fiscal Year Research-status Report
森林資源の利用技術としての畑作と野生動物の管理に関する民俗環境史的研究
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23520994
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Research Institution | Tohoku Bunka Gakuen University |
Principal Investigator |
岡 惠介 東北文化学園大学, その他の研究科, 教授 (90301697)
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Keywords | 森林資源 / 畑作 / 放牧地 / 薪炭林 / 焼畑 / ニホンジカ / 鹿踊り / 民俗技術 |
Research Abstract |
これまでの調査で、森林を畑や焼畑、採草地、放牧地、薪炭林に改変する技術については、文献、聴き取りによって多くの資料を集めることが出来た。ただ文献は、未見の資料が地方図書館に埋もれている可能性もあり、今後も調査を続行していく。 畑や焼畑、採草地、放牧地、薪炭林などと森林との境界ゾーンや、土地利用の実態については、あらかじめ想定した時代(50年前、昭和15年頃など)における復元が困難であり、いくつかの航空写真も活用しても、その精度は納得のいくものになかなか至らない。むしろ個人の記憶にある、境界ゾーンがはっきりしていた時代の特定を行い、その時代の利用について聴き取りを重ねた。マッピングについても、復元の過程で話者の記憶の違いが露呈し、むしろその齟齬にムラの社会関係が立ち現れているともいえるのだが、地図としては若干クリアではない部分を含まざるを得ないようである。 ニホンジカの分布については、各地区の森林管理署へ問い合わせを行い、北上山地に限らず、岩手県北部広域に分布・繁殖していることがわかってきた。この分布が、ある程度鹿踊りの残存する地域と重なるのも興味深い。市町村でもシカの被害が深刻化しはじめ、町単独の補助事業でシカの捕獲に乗り出すところもあらわれはじめた。予想以上に早いペースでニホンジカが繁殖・増加しており、森林管理署も森林の植生がシカによって改変されてしまうことへの危機感を強め、調査に乗り出している。 明治・大正期の野生動物、特にニホンジカの利用状況、雑穀の商品価値については、資料が集積されているが、さらに文献と各地の資料館、博物館の調査を進める。焼畑跡地の利用についても調査を進め、山林だけではなく、畑やゴルフ場への利用なども見られることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進んでいるが、研究計画当初には予想していなかった早さで、ニホンジカによる岩手県北部の被害の広域化と、被害への市町村の施策もはじまり、これらの情報の把握に手間取った感がある。 当初は予想できなかった動きとはいえ、本研究のテーマには大きくかかわる課題であり、今後早急に情報を集約する必要がある。 長期出張の難しい状況の中で、こうした情報を効率的に収集する必要がある。 ニホンジカの分布についての調査は当初から予定し、森林管理署を中心にこれまでも進めてきている。これまで必ずしも重要な調査対象としていなかった北上山地からより広い市町村におけるシカ対策を把握し、当該地域での聴き取り調査に力を注いでいけば、次年度も順調に調査が進められると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで十分に調査対象に含んでいなかった、ニホンジカの分布拡大と被害への市町村レベルでの対応について、集中的に調査を行い、またそれと、被害者である農家や、駆除者である地元ハンターへの聞き取りを重ね合わせ、地域にとってこのニホンジカの北への拡大の持つ意味を把握することに力を傾注することで、本課題の解明を効率的に推進していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
冬期における調査地への経路が大雪により途絶し、除雪後も低温と峠の凍結が長期にわたり、安全な出張旅行が難しかったため。 調査地への出張旅費に用いる。 なるべく冬に入る前に、調査を終えることを心がけたい。
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Research Products
(1 results)