2013 Fiscal Year Research-status Report
東アフリカ多言語併用社会に関する文化人類学的研究:タイタ語の世代間継承を中心に
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23520995
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Research Institution | Shobi University |
Principal Investigator |
坂本 邦彦 尚美学園大学, 総合政策学部, 教授 (20215643)
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Keywords | ケニア / タイタ |
Research Abstract |
東アフリカのタイタ人の世界に関する文化人類学的研究の一環として、タイタ語の世代間継承の実態を明らかにすることを通して多言語併用社会における文化変化の研究方法に新たな地平を切り開き、言語の記録、分析に関わる研究にその手法を応用することができるようにすることが本研究の目的である。 研究目的の達成のために、4年間の研究期間を3つの段階に分けて進めていく。平成23年度においては、第1段階として、既に文字化して採録している言語データのうち基礎語彙2000語の中から1000語を抽出して内容により再分類し、語群に編成した。平成24~25年度においては、第2段階として、世代間継承の視点からタイタ語を記録する予定であったが、既収録語彙の分類方法に関して、大幅に見直す必要が生じてきたため、これまでの研究に加え、新たな語彙調査票を参照しながら組み換えを行った。第3段階では、記録したデータの分析をネイティヴ・スピーカーとおこない、研究全体をまとめていくことを予定している。 平成25年度は、予定していた2回のフィールドワークが大学内部における日程の調整がつかなかったため、夏の1回になった。予定していた1回分は、平成26年度に送ることとする。平成25年度の研究では、ユネスコが2003年3月に発表した基準UNESCO Ad Hoc Expert Group on Endangered Languages 2003をもとにして、言語がどの程度次の世代に継承されているかの測定をAB500語に関して行った。第2段階では、地域間の比較研究に入ることを予定していたが、十分なフィールドワークの時間が取れなかったことから、平成26年度に送り、最終段階を迎えていくこととする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度から取り組んでいる語彙の新たな分類を継続して行うとともに、世代間継承に関するフィールドワークを開始した。平成25年度では、ユネスコのLanguage Vitality and Endangermentの中の第1項「世代間継承」Intergenerational Language Transmissionに示されている6段階の指標を参照しながら500語の分類を行った。 第2段階の25年度の研究では、伝統語彙のうちのB群(501-1000)を対象として記録する予定であったが、昨年度の研究予定の持ち越しとしてA群(1-500)を対象とした。 平成25年4月~7月にA群(1-500)のデータ分析を行い、8月~9月にかけて10日間ほどケニアでの調査研究をおこなった。十分な調査期間をとることができず、当初はタイタヒルズとナイロビで年齢層の異なるタイタ人各3名を対象に現地調査協力者とともにB群前半の記録を行なう予定であったが、25年度に予定していた春の調査とともに、平成26年度に送ることとする。10月~平成26年3月にかけては、A群(1-500)後半のデータ分析とB群(501-1000)前半の内容整理にあてた。本研究では、性差、年齢差を考慮しながら村落地域であるタイタヒルズと、都市であるナイロビで生活しているタイタ人を対象として比較調査を行い、これにより、語群ごとに2地域においてどの程度の世代間継承がおこなわれているか、その違いについてフィールドワークを介して明らかにしていくことを目指してきた。この段階に関しては、語彙の認知に関して実際には個人差があり、ユネスコの示す6段階の指標を参照しつつ、現地の状況を勘案して進めて行くことが必要になってくると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
多言語併用のタイタ社会では、民族的アイデンティティーへの回帰か、伝統文化への誇りの表明か、あるいは、危機言語化することへの回避策か、タイタ語のFM放送が開始された。8月に現地を訪れた際、AnguoFMと呼ばれる放送局を訪問することができた。ケニアでは、英語、スワヒリ語以外の民族語による放送が複数存在してきたが、いずれも人口数が多い言語が中心であった。人口15万人ほどのタイタが独自の放送局を持ち、タイタ語のみで放送を進めていることは、他に例を見ない。この放送局の存在は、現在の研究を進める中で知ったことから、当初の研究計画の中に入っていないが、放送内容の中には、伝統的なタイタ語の言い回しを若い世代が理解できるかを問うたり、視聴者から古いタイタ語の意味についての質問を受けたりするコーナーがあるなど、本研究に重要な情報を提供してくれる可能性がある。 現在のところ、今後の研究の推進に関して大きな変更を加える予定はなく、これまでの研究計画の遅れを取り戻しながら段階を踏んで進めていくことになるが、合わせて、AnguoFMとの接触を持つようにし、研究の広がりの可能性を検討していくこととする。今後は、性差、年齢差を考慮しながら村落地域であるタイタヒルズと、都市であるナイロビで生活しているタイタ人を対象として比較調査を行うことになるが、特に都市部での調査の可能性が課題としてあり、状況によっては、タイタヒルズ内部でのインテンシヴな調査を中心とすることもある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に予定していた2回の現地調査が、大学の日程調整の関係上、年度末の2月から3月にかけて海外出張の時間をとることができず1回の実施となったため、次年度使用額が生じることとなった。その分の現地調査を平成26年度に実施することで調整していく。平成26年度では、当初の計画では現地調査は1回であったが、夏と翌年春の2回の実施とする。 次年度使用額(908,429円)に平成26年度の直接経費(700,000円)を合わせた額を平成26年度の直接経費として充当する。現地調査に関しては、8月から9月にかけての30日間、平成27年2月から3月にかけての30日間を予定している。費目別内訳については、現地調査を2回組み込むことになるため各項目とも当初の研究計画の2倍の額を計上することになるが、特に、旅費と人件費・謝金の項目に次年度使用額を充当するようにし、全体のバランスをとっていくこととする。具体的には、物品費(10,000円×2.0=20,000円)、旅費(620,000円×2.3=1,430,000円)、人件費・謝金(50,000円×2.3=115,000円)、その他(20,000円×2.0=40,000円)の配分で研究計画を推進していくこととする。
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