2014 Fiscal Year Annual Research Report
東アフリカ多言語併用社会に関する文化人類学的研究:タイタ語の世代間継承を中心に
Project/Area Number |
23520995
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Research Institution | Shobi University |
Principal Investigator |
坂本 邦彦 尚美学園大学, 総合政策学部, 教授 (20215643)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | タイタ / ケニア / 言語 / 世代間継承 |
Outline of Annual Research Achievements |
東アフリカのタイタ人の世界に関する文化人類学的研究の一環として、言語の世代間継承にかかわる文化変化の実際を文化の内側から描き出すとともに、危機言語研究への応用可能性を探究することが本研究の目的である。アフリカ社会の近代化や文化変化が語られる時、外部からのインパクトによる変化が強調されることが多いが、表現手段としての言語にあっては、時代の変化の中で生じる内部要因が言語選択に大きな影響を与えていると考えられる。 平成23年度は、これまでの研究のなかで既に収録している言語データを内容により再分類し、語群に編成した。平成24年度では、収録語彙の分類方法を大幅に見直すとともに、収録言語データの再分類と修正をおこなった。平成25年度では、収録語彙を対象にユネスコの分類基準に則した言語の世代間継承の測定をおこなった。これをもとに、平成26年度では、タイタ語の変化に関する認識をもとに、収録語彙2000語の分類を完了した。すなわち、「スワヒリ語をはじめとする他言語の語彙に置き換わりつつあるもの」、「各世代を通してタイタ固有の語彙として使われているもの」、「年長者をはじめとする一部のタイタ人により使用されているが、将来世代間継承が絶たれる可能性がきわめて大きいもの」、以上3分類である。これにより、一つの表現内容に関して分類の異なる複数の語彙があげられる例が2割ほどあることが明らかになった。この部分は、従来の表現型が新たな表現型へと置き換わっていく変化型として捉えることができる。危機言語はその言語自体の消滅を問題にしているが、そこに至るプロセスを考えた場合、話者数15万人ほどの言語であるタイタ語内部での文化変化と民族語に対する維持のための活動は、危機言語研究に対し、従来型のフィールドワークとは異なる視点を与えてくれると考えられる。この点は、今後の継続研究としていきたい。
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