2013 Fiscal Year Annual Research Report
在英ネパール人移民の多重市民権をめぐる社会運動と理念、生活実践についての研究
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23520998
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
上杉 妙子 専修大学, 文学部, 兼任講師 (90260116)
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Keywords | 多重市民権/国籍 / 市民権/国籍 / 移民 / ネパール / 英国 / 越境公共圏 / 在外ネパール人協会 / 開発 |
Research Abstract |
本研究では越境公共圏で構築される多元的かつオルターナティブな市民権概念のありようについて解明するために、在英ネパール系移民や彼らが所属する在外ネパール人協会による多重市民権法制化運動と生活実践等に焦点を当てた。 1年目である平成23年度には、英国において面接調査と文献収集を行った。平成24年度には、オーストラリアで開催された在外ネパール人協会の第7回地域大会に参加し、口頭発表と参与観察、面接調査、文献収集等を実施した。また、英国でも面接調査と文献収集を実施した。最終年度である平成25年度には、5月と6月に英国に出張し面接調査と文献収集を実施した。10月には、ネパールにおいて開催された在外ネパール人世界大会に参加し、参与観察と面接調査、文献収集を実施した。国内では、①収集した情報の整理と分析、②研究会における口頭発表、③関連する研究成果についての論文の刊行を実施した。 以上の調査研究によりいくつかのことがわかった。第一に、多重市民権法制化運動は、ビジネスの越境展開に商機を見出すネパール系実業家たちにより強く推進されている。第二に、ネパール政府は民間活力の利用や投資に重点を置く開発政策を採用しており、在外ネパール人協会の運動に一定の理解を示している。第三に運動を通して母国に対する責任を強調する市民権概念やネパール人としての一体感が育まれつつある。第四に在外ネパール人協会は王制廃止後に勢力を強めた政党と密接な関係を構築する一方で、民主化以降に育ちつつある市民社会とのつながりは希薄である。第五に、ネパールでは市民権に関する議論においてインドの干渉が言及される傾向があるが、多重市民権の法制化をめぐる交渉にもそのことが看取された。研究成果は2014年5月に開催される国際人類学民族科学連合(IUAES)の中間会議などにおいて発表するほか、論文としても発表すべく準備を進めている。
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Research Products
(8 results)