2011 Fiscal Year Research-status Report
グローバル化する互酬性―サモア儀礼交換の新たな展開
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23520999
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
山本 真鳥 法政大学, 経済学部, 教授 (20174815)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / サモア / トンガ / ニュージーランド / 文化人類学 / 互酬性 / トランスナショナリズム / グローバリゼーション |
Research Abstract |
サモア社会の儀礼交換を中心とする互酬経済は、20世紀後半の市場経済の進展に伴い、変容を遂げつつエスカレートしてきているが、さらに2000年頃に始まる、政府による女性の伝統的な仕事の見直し、儀礼交換縮小および伝統回帰の政策介入があって、大きな転機を迎えている。23年度は、山本が海外研究員となったために、多くの時間を文献調査や、フィールドワークに費やすことが可能であった。ハワイを中心に研究を行った。 文献研究としては、オーストラリア国立図書館(6月末より9日間)とサモア・ネルソン図書館、サモア国立大学図書館(7月初旬より2ヶ月間)で多くの成果が得られた。 また、サモア独立国にて、サモア国立大学や政府の協力を得て、サモア独立国に2ヶ月間の滞在期間中、フィールド調査を行った。フィールド期間中は、政府の方針に関して政府役人に面接調査を行い、政府が伝統文化保全の運動としててこ入れしている女性のファインマット編みの活動をつぶさに観察し、編み手に面接調査を繰り返し、多くの知見を得られた。また、儀礼交換の場面や、市場での交換財の商品化について観察し、一般の人々にも面接調査を行った。3月は1ヶ月間ニュージーランド・オークランド市で、サモア人移民とトンガ人移民の儀礼交換についても情報収集を行った。オークランド工科大学公共政策研究所の協力を得て、聖職者などコミュニティ・リーダーに面接調査を行った。 7月初旬にパースで開催された国際人類学・民族学会議、10月にインドネシア・マナドで開催されたアジア社会科学協議会連盟、11月にモントリオールで開催されたアメリカ人類学会に参加して、サモア研究の一端を発表し、討論を行うことができた。また、ハワイやフィールドに滞在中に、同僚との出会いもあり、討論を重ね、多くの成果を得た。 23年度の調査研究の成果を、24年度中に是非とも執筆する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年計画の初年度であることを鑑みると、多くの成果が得られた。 過去において、儀礼交換の場面での財の移動を中心に研究を行ってきたが、交換財(儀礼財)の生産を研究することがなかったのは不明というしかない。これまで、非都市化地域の女性たちは、ファインマットの生産を行うことで、家族に大きな現金収入をもたらしてきた。それは単に商品生産であるとは限らず、儀礼の場で互酬的に交換するものであったりもしたわけだが、それが家計を大いに潤してきたことは間違いない。その確認がとれたことは大きな成果である。 また、ファインマットが交換財(儀礼財)であると同時に商品でもあるという二面性がサモアの儀礼交換の制度をますますエスカレートさせる特徴をもっていることがわかってきた。 ただし、ハワイにて行う計画だったサモア移民の儀礼交換参加の調査は諸々の研究上の都合で、満足に行うことができなかった。この計画の範囲内でハワイにもフィールドの枠を広げることは現在は難しいと考えているが、彼らの行う儀礼交換の概略は、これまでのサモア移民の研究から把握している。 またサモア政府の政策については、面接調査を通じてかなりデータを集めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度について、概ね当初の計画にそって行う。3回のフィールド調査を計画している。1回目は、6月1日に行われるサモア独立国の独立50周年の儀礼を観察する。このときに極上のファインマットの贈与が行われる予定と聞いている。あわせて、ファインマットをめぐる儀礼(5月中旬開催)の様子について情報を得るため、1週間程度の出張となる。2回目は8月20日頃~9月10日頃実施し、トンガにて交換財(儀礼財)の生産とやりとりについて調査。また、サモアから購買したファインマットについて情報を集める。第3回目は、2月下旬~3月中旬に実施し、オークランドのトンガ移民コミュニティにて調査を行う。主に交換財の生産とやりとりについて調査。 これらのフィールド調査を終了したときには必ずデータ整理を行う。4月の年度開始より6月の調査までは、23年度調査の整理と、23年度調査から得られた成果を中間報告として論文に執筆する。必要に応じて、国立民族学博物館にトンガに関する文献データの調査に行く。 平成25年度については、フィールド調査は1回に絞り、サモア独立国のフォローアップ調査を行うか、その必要がなければ、ハワイのサモア移民コミュニティで儀礼交換の調査を行う。得られた成果を論文にまとめ、英文論文を執筆し、国際会議に出席して発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費 100,000(書籍 50,000; ハードディスク等文具 50,000)旅費 1,200,000(国内 50,000; 海外滞在費 700,000; 海外航空運賃 450,000)人件費・謝金 180,000(資料整理アルバイト 130,000; 英文校閲 50,000)その他 170,000(郵便費・送料 70,000; レンタカー賃借料100,000)
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