2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23521000
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
安室 知 神奈川大学, 経済学部, 教授 (60220159)
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Keywords | 在来技術 / 水田稲作 / 文化資源化 / 赤米 / 冬水たんぼ / 地域振興 / 民俗学 |
Research Abstract |
1990年代以降、日本の稲作農村では、おもに高度経済成長期以前におこなわれていた水田稲作に関する民俗技術が、環境に適応的な技術として再評価され、復活してきている。それは、重要な文化資源として位置づけられ、地域振興や環境教育といった場面において、さまざまに活用されてきている。またその一方で、文化資源として活用される現場においては、伝統の粉飾や歴史の捏造といった問題も表面化している。本研究は、そうした水田稲作をめぐる民俗技術が現代社会において復活してくる経緯とその歴史民俗的意義を探るものである。 具体的には、研究期間全体を通して、伝統的な稲作技術とされる冬水たんぼ(冬期湛水農法)とコイ農法、また赤米栽培と赤米をめぐる神社祭祀に、それぞれ注目した。その結果、①住民の主体性と行政との関係から、用途や効用また期待される成果など、それぞれについて文化資源としての特徴を明らかにすることができた。また、②水田稲作をめぐる民俗技術が文化資源化される経緯について、ワイズ・ユースやサステイナビリティーまたスロー・フードといった環境思想が深く関わっていることを明らかにすることができた。さらに、③現代社会においては、文化資源化された民俗技術に地域振興(観光開発や村内融和など)と環境保全(修景など環境復元も含む)が期待される一方で、それがもたらすさまざまな負の要素も存在することを具体的に明らかにした。 最終年度となる平成25年度については、とくに赤米栽培とその祭祀について、鹿児島県南種子町茎永の宝満神社お田植祭を例に取り、赤米の商品化と赤米祭祀の文化財指定に向けた動きに注目して、文化資源化のありかたを調査した。
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