2011 Fiscal Year Research-status Report
都市コミュニティをつくる貨幣:沖縄と大阪の模合(頼母子講)に関する研究
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23521007
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
平野 美佐 (野元 美佐) 天理大学, 国際学部, 准教授 (40402383)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 模合 / 沖縄 / 頼母子講 / 貨幣 / 都市コミュニティ / 大正区 |
Research Abstract |
23年度においては、計画通り、文献調査と沖縄でのフィールドワークを進めてきた。文献調査は、沖縄の図書館・博物館、国会図書館、国立民族学博物館、沖縄県大阪事務所などで行い、文献、新聞、沖縄の市町村史などから模合(頼母子講)に関する資料を収集し分析した。また模合以外にも、その背景となる関連書籍を読み込んだ。 沖縄の現地調査においては、那覇を中心に模合への参加を行ってきた。元同僚の年配女性の集まり、40代中心の友人の集まり、同じ地域に暮らす年配男性の集まり、故郷を同じくする出身者の集まりなど、計9つの多様な集団編成の模合に参加し、そのいくつかは複数回出席し、継続調査を行ってきた。模合の会合では、参与観察とメンバーへの聞き取り調査を行い、会の活動やメンバーの人間関係、会を離れてのつながりの有無、模合で得た金の使用などを調べた。必要な場合は、個々のメンバーの職場や家を訪ねて聞き取りを行った。それ以外に、模合に関するアンケート調査を行い、沖縄の模合の現状を把握することに努めた。また、かつての模合のあり方を知るために、年配者にインタビューを行った。那覇の牧志市場のおいても、市場独特の模合の特徴やその歴史を継続して調べている。 また、沖縄在住の研究者との会談を行い、アドバイスや資料をいただいた。沖縄で行われるいくつかのイベントの参加観察も行い、模合の枠から出て、その背景にある沖縄社会全体の理解を深めた。世界に居住する沖縄系移民が5年に1度沖縄に里帰りして行われる世界ウチナーンチュ大会では、その会場において、ブラジル、ペルー、ハワイなど、世界の沖縄系移民の方々に、移住先での模合の有無やその活動についてインタビューを行うことができた。 また、24年度から開始する予定であった大阪大正区でも、模合の調査にすでに着手し、模合の会合の参与観察や聞き取り調査を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献調査においては、古い模合の形態、現在までの模合の変遷、現在の模合の広がり、手法など、模合について理解を深めることができた。また、模合以外の文献にも目を配ることで、模合の背景にある沖縄社会、伝統文化について理解を深め、かつ、本研究の理論的枠組みを形成することに役立った。 沖縄での模合の参与観察・聞き取り調査では、文献でカバーできない模合の情報、たとえばそこで交わされる人びとの語りや心情、醸し出される雰囲気、貨幣の扱われ方、人間関係の広がりなどを知ることができた。また、個々人の模合との関わり、模合への思い、体験などを聞かせてもらい、個別性と全体性から理解する手掛かりを得た。アンケートからは、模合がいかに沖縄社会に深く根付き、多種多様な形で行われているかを知ることができた。年配者からのインタビューでは、文献に書かれていない具体的な情報、貴重な経験談を聞くことにより、模合の現代までの経緯について理解を深めることができた。また、牧志市場の調査から、市場独特の模合のやり方が昔も今も息づいていること、そして模合を通じて市場の人間関係が調整されていることなどがわかってきた。 また、沖縄の研究者との意見交換、情報交換を通じて、模合を研究することの意義や、それが沖縄でも期待されているということを再認識できた。世界ウチナーンチュ大会での調査では、沖縄発の模合が、その違いはありつつも世界の沖縄移民コミュニティに広がっていること、そして模合という沖縄文化の根強さを確認することができた。 大阪市大正区での調査では、沖縄と大正区とのネットワークや、沖縄とはまた違った模合のあり方、人間関係のあり方が見えつつある。このように、本研究は計画にそって、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度も、沖縄でのフィールドワークを、これまで得られた結果を基に継続していく。とくに、模合メンバーの個々人の内面に焦点をあて、模合や貨幣についての個々人の考え、価値観を明らかにしていきたい。具体的には、模合や貨幣についての語りを中心に、より詳細なライフヒストリーをとらせてもらう。また、具体的な貨幣のやり取りなどを詳しく調べたい。それにより、模合、貨幣、人間関係という三つの重要なものの関係を探り、模合という貨幣活動を通して、いかに人間関係やコミュニティが構築されていくのかについて、具体的に明らかにできると考えるからである。このことから、模合がなぜ沖縄で発展し続けることができているのかを考察していきたい。さらには、模合組織では、多くの場合、リクリエーションなど親睦を深めるイベントがセットになっている。模合だけでなく、そのような活動に参加することで、模合の人間関係のあり方を探っていきたい。 また、大阪大正区でのフィールドワークを進める。現在参加している模合以外にもいくつかの模合に参加し、沖縄出身者が大阪という土地でどのように模合を継続し、また都市の状況に合わせて変化させているのか。そして、大阪の人を巻き込んでいるのか、それが大阪の都市コミュニティの形成に役立っているのかなどを考察していく。これによって、模合が沖縄という地域限定のものではなく、各地に根付く可能性をもつことを裏付けたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度も、沖縄での模合参加や現地の移動など、沖縄調査のための旅費が最も大きい割合を占める予定である。また、国会図書館など国内各地の図書館等への資料収集のため、あるいは学会参加などで、沖縄以外の国内旅費も必要となる。大阪大正区での現地調査については、近距離で日帰りも可能であるため、あまり費用がかからない見込みである。 また、調査に必要な機材や物品、研究に必要な書籍などの購入が適宜見込まれる。資料の複写費、フィルムの現像代、イベント参加費なども見込まれる。
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