2012 Fiscal Year Research-status Report
フィリピンにおける日本人移民の先住民族社会への適応とそれが与える影響
Project/Area Number |
23521009
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
森谷 裕美子 九州産業大学, 国際文化学部, 教授 (40221709)
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Keywords | フィリピン / 日系人 / 先住民族 |
Research Abstract |
本研究の目的は、もっぱらアメリカ研究、ハワイ研究として行なわれていた日系移民研究を、そうした地域と異なる特徴を持つフィリピンでの、日本人の移住社会への適応過程にかんする実証的な研究を行うことで、多様な移民問題の実情を把握し、グローバル化された世界の今後の見通しを立てるための提言を行うことであった。 そこで本年度は、昨年度に引き続き、移民に関する資料を収集するとともに、フィリピンおよび日本で日系人および戦後の引揚者に対し、インタビュー調査を行った。その際、本研究の特徴でもある「先住民族の人々が彼らをどのように受け入れ、それが相互の文化にどのような影響を与えたかについてを受け入れ側の視点から捉える」ことに留意し、聞き取りを実施した。 そこで明らかになったことは、日系人社会の歴史的位相性と定着性であり、移住の時期の相違によって、あるいは配偶者が日本人であったかどうかによって、先住民族に対する「まなざし」や接し方が異なるということである。とりわけ、当時の日本の時代的な背景と相まって、あとからやって来たエリート意識の強い日本人と、道路工事の労働者としてやってきた日系人とのあいだには先住民族社会への適応や態度について大きな乖離があるということが多くのインタビューや歴史資料から明らかとなった。いっぽう「日系人」であることが日本への出稼ぎを可能にし、経済的な上昇が見られるようになったことから、それが周囲との関係性を大きく変えつつあることもわかった。 いっぽう、これらの研究を通し、多くの日系人2世が高齢で、健康に問題があるにもかかわらず、未だ就籍や日本にいる親族との面会がかなっていない現実を知り、本研究がそうした問題解決の一助となるに違いないと、その重要性を再確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は予定していたフィリピンで3回(うち1回は記念行事)、国内で1回、日系人および引揚者のインタビュー調査を行うことができた。また、多くの貴重な文献資料を得ることができた。また、これまでの研究成果の一部を学会誌等に発表、学会発表も行った。これらのことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も、フィリピンおよび日本で調査および資料収集にあたるとともに、最終的な研究の成果をまとめ、公表するための準備を行うが、調査の過程で9月に日系人にかんする記念行事(ベンゲット移民110周年記念式典)があり、それに参加することが可能であることが判明したので、当初の予定を若干変更し、現地調査は9月、12月、3月に行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度もフィリピンおよび日本での調査および資料収集が中心となるので、研究費の多くはそれらの調査のための旅費および謝金に使用する予定である。なお急遽、日系人の方を研究協力者として来年度、日本にお招きすることにしたため、今年度の予算を一部留保しており、これについては12月ごろに実施する予定である。
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