2013 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピンにおける日本人移民の先住民族社会への適応とそれが与える影響
Project/Area Number |
23521009
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
森谷 裕美子 九州産業大学, 国際文化学部, 教授 (40221709)
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Keywords | 日本人移民 / 先住民族社会 |
Research Abstract |
本研究の目的は、専らアメリカやハワイを対象として行われてきたこれまでの日系移民研究を、そうした地域と異なる特徴を持つフィリピンでの移住社会への適応過程に関する実証的な研究を行うことで、多様な移民問題の実情を把握し、グローバル化された世界の今後の見通しを立てるための提言を行うことにあった。 そこで最終年度では、これまでの研究を踏まえ、日系人が先住民族の多く住む北部ルソン地域でいかに定着していったかを、現地でのインタビューを通して明らかにした。その結果、先住民族社会では、むしろ先住民族としてのアイデンティティが通常、意識されており、日系人としてのアイデンティティは他者からのラベリングに過ぎず、また、それが彼らを社会から排除する方向へは働いていないということが分かった。さらに、彼らのアイデンティティが日本人の父の故地を訪問することでいかに変容するかについて、実際の日本滞在を通して分析した。 研究期間全体において明らかになったことは、フィリピン日系人問題が他の日系人と大きく異なるのは、太平洋戦争によって日系人社会が破壊され、多くの日系人が極度の貧困にあえいだり、出自を隠して暮さなければならなかったりした点にあったが、実際には、先住民族社会においてはこれら日系人を排除するのではなく、包摂し、彼等もまたそのなかで突出することなく、先住民族の文化を受容してきたということである。しかし、そうした関係もグローバル化の過程で変容することになり、日系人であることが日本への出稼ぎによる経済的上昇を約束したことで、それが先住民族社会の変容をもたらしている。以上により、移民研究においては、その変容を通時的に捉えることが極めて重要であり、とりわけグローバルな視点でもって、それを継続的にとらえることでその本質が明らかにされるのであって、今後も3世、4世の研究を継続して行っていくことが重要であると考える。
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Research Products
(3 results)