2012 Fiscal Year Research-status Report
瀬戸内海及び西日本における多島海世界の民俗芸能の研究
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23521012
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
笹原 亮二 国立民族学博物館, 研究戦略センター, 教授 (90290923)
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Keywords | 民俗芸能 / 島 / 海 / 瀬戸内海 / 民俗学 |
Research Abstract |
本研究は島々・海・沿岸地域を一体の島嶼世界と捉え、そこでの民俗芸能を歴史的に形成・伝承されてきた島嶼世界の民俗文化として解明することを目指し、瀬戸内海を初め、西日本各地の多島海的海域における島々と沿岸地域の民俗芸能について調査を行い、相互比較を試みるものである。 平成24年度は、瀬戸内海の島々と本州・四国の沿岸地域の各地の民俗芸能を中心に現地調査を行った。調査を行ったのは、継獅子(愛媛県今治市)・御田植祭(愛媛県西予市)・盆踊(岡山県笠岡市・愛媛県今治市)・踊念仏(岡山県真庭市)・祝島の神舞神事(山口県上関町)・風流踊(山口県山口市・長門市)・だんじりの巡行に伴う芸能(岡山県笠岡市・広島県三原市)・神幸祭に関わる芸能(愛媛県松山市・今治市・伊方町・宇和島市)・地芝居(愛媛県松山市・岡山県奈義町)・神明祭に関わる芸能(山口県上関町・広島県竹原市)・藤縄神楽(愛媛県大洲市)等である。 加えて、現地調査を行った民俗芸能を初めとした各地の民俗芸能に関する論文・調査報告書等の文献等の調査・収集や情報収集を、各地の図書館等において実施した。調査を行ったのは、岡山県立図書館・笠岡市立中央図書館・広島県立図書館・広島市立中央図書館・福山市立中央図書館・呉市中央図書館・竹原市立図書館・山口県立山口図書館・山口市立中央図書館・防府市立防府図書館・周南市立徳山図書館・柳井市立柳井図書館・萩博物館・香川県立図書館・愛媛県立図書館・松山市立中央図書館・今治市立中央図書館等である。 こうした各地の民俗芸能に関する文献等の関連資料の調査を現地調査と並行して行うことで、本研究全体をより適切かつ効果的に進めることができた。また、各地の民俗芸能はそれが行われる祭と不即不離なので、祭自体の分布・内容構成等の地域的なあり方を把握することの重要性・必要性を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来は、十分な資料や情報を集成していなかったり、実態を把握していなかったりした瀬戸内海沿岸の各県域等、本研究の対象となる諸地域の民俗芸能について、現地調査や関連資料の調査・収集や情報収集を行うことで、具体的な様相の把握や理解を大いに進展・深化させることができた。特に、当初調査を予定していた九州北西部の民俗芸能に関しては、申請者が関わる他の研究プロジェクトによって調査を行う機会を得て、本研究の調査を瀬戸内海西部を中心に集中的に進めることが可能となったので、この地域に関する充実した調査・情報収集を行うことができた。 また、各地の民俗芸能に対する現地調査に加え、各地図書館等での文献等の調査・収集や関連情報等の収集を並行して行ったことで、現地調査、文献等の関連資料の調査・収集や情報収集の双方をより適切かつ効果的に進めることができた。同時に、今後の研究の遂行において重要となる課題や問題点のより的確な把握を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
瀬戸内海の島々と沿岸地域、及び九州北部から西部にかけての島々と沿岸地域等、西日本各地の多島海世界に伝わる民俗芸能について、前年度までに行った現地調査や先行研究等の調査や情報収集等を通じ、分布や所在等の概括的な状況を把握・理解するに至った各地域の様相をより精密で充実したものとするために、各地の民俗芸能に対する現地調査を中心とした調査研究を行う。また、それぞれの地域の民俗芸能に関わる文献等の関連資料の調査・収集や情報収集も併せて行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
瀬戸内海の島々と沿岸地域は、西日本における最大の多島海的海域として本研究の最も重要な対象地域となるので、特に集中的に調査を行う。 加えて、本研究が対象とする地域以外の島々の民俗芸能や、調査対象地域内外の民俗的な祭や儀礼についても、比較や参照すべき事例として必要性が認められた場合は適宜調査を行う。 次年度は、前年度に引き続き、これまでの調査研究によって把握した本研究の対象地域の民俗芸能の全体的な状況を基に、瀬戸内海を初め、西日本各地の多島海的海域の島々と沿岸地域の民俗芸能について、現地調査を中心に調査研究を進める。次年度の現地調査は、瀨戸内海中央部・東部の島々と沿岸地域、及び九州北西部の島々と沿岸地域の民俗芸能を中心に行う。現地調査は可能な限りそれぞれの民俗芸能の上演にあわせて行うが、上演日時の重複等で当初の予定通り行うことが困難な場合は、翌年度以降に実施を変更したり、翌年度以降実施が予定される地域を前倒しで行う等、状況に合わせて柔軟に対処する。同様の事情で前年度までに調査が適わなかった地域に関しても、適宜調査を実施する。 また、現地調査を行った民俗芸能に関連するものを中心に、文献等の各種資料や情報の調査・収集も併せて行う。 更に、映像記録・観察やインタビューの記録・文献等、調査研究で収集した各種資料の整理・分析を行う。夏期や秋期等、上演が集中して短期間に大量の資料や情報が得られた場合は、適宜補助の人員等を充当するなどして効率的に整理・分析を行う。
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