2013 Fiscal Year Research-status Report
瀬戸内海及び西日本における多島海世界の民俗芸能の研究
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23521012
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
笹原 亮二 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 教授 (90290923)
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Keywords | 民俗芸能 / 島 / 海 / 瀬戸内海 / 民俗学 / 獅子舞 / 神楽 |
Research Abstract |
本研究は、島々・海・沿岸地域を一体の島嶼世界と捉え、そこでの民俗芸能を、歴史的に形成・伝承されてきた島嶼世界の民俗文化として解明することを目指し、瀬戸内海を初め西日本各地の多島海的海域や島々や沿岸地域の民俗芸能について調査を行い、相互比較を試みるものである。 平成25年度は、瀬戸内海東部の島々と本州・四国の沿岸地域の民俗芸能を中心に現地調査を行った。調査を行ったのは、五ツ鹿・牛鬼・四ッ太鼓・唐獅子・練り物(愛媛県宇和島市・愛南町・八幡浜市)、川名津神楽(愛媛県八幡浜市)、獅子舞(愛媛県今治市)、大三島神楽(愛媛県今治市)、かぶと踊(愛媛県新居浜市)、夏越しのお神楽(香川県観音寺市)、念仏踊(香川県綾川町)、ひょうげ祭(香川県高松市)、獅子舞・虎頭の舞(香川県東かがわ市)、太鼓台・地芝居(香川県土庄町)、獅子舞(香川県三豊町)、だんじり・山鉾・祭礼芸能(徳島県海陽町)、踊念仏・盆踊(徳島県徳島市・つるぎ町)、神踊(徳島県徳島市)、鷺舞(山口県山口市)、滝坂神楽舞・腰輪踊(山口県長門市)、本山神事・獅子舞(山口県周南市)、厄神舞(山口県山口市)、矢野神儀(広島県三次市)、名荷神楽(広島県尾道市)、だんじり歌・獅子舞(兵庫県洲本市・南あわじ市)、国分神楽・宇目神楽(大分県大分市)等である。 また、現地調査を行った民俗芸能を初めとした調査地域の民俗芸能に関する論文・調査報告・関連情報等の調査・収集を各地の図書館等において行った。調査を行ったのは、愛媛県立図書館、松山市立中央図書館、香川県立図書館、ちょうさ会館、徳島県立図書館、山口県立山口図書館、下関市立図書館、大分県立図書館、島根県立古代出雲歴史博物館、島根県立図書館等である。現地調査と文献等の関連資料の調査を併せて行うことで、現地調査を行った民俗芸能に関する理解が促進し、本研究を効率的に進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、前年度までに十分な現地調査や文献等の関連情資料の調査・収集が行われず、十分な資料や情報を集積していなかったり、実態を把握していなかったりした瀬戸内海東部の香川県域・徳島県域・兵庫県域の民俗芸能について、現地調査や関連資料の調査・収集や情報収集を行うことができた。その結果、瀬戸内海東部の民俗芸能の概括的な状況を把握することができたことは、大きな収穫であった。 特に、獅子舞や神楽やだんじりの巡行に関わる芸能は、香川県域や兵庫県域等の瀬戸内海東部にも分布が濃厚に認められることが判明し、西部の南予地方まで瀬戸内海全域に広範に分布が認められたが、同時に、同系統の民俗芸能であっても、瀬戸内海西部と東部、本州側沿岸と四国側沿岸といった地域毎に相当程度違いが見られることを確認した。 こうした広域的で多様性に富んだ同系統の民俗芸能の分布状況は、元々は同じ民俗芸能が伝播定着し、その後、それぞれの地域で伝承されていく過程で地域毎に独特の類型が形成された可能性が十分考えられる。とすると、そうした地域毎の類型の成立を促した原因は何か、それが、多島海的海域という地理的特徴とどのように関わるのかといった新たな問題の所在を明らかにすることができた。 その一方で、徳島県域の踊り念仏や神踊やたたら音頭といった、他の地域では見られないその地域独自の民俗芸能の存在も判明し、この地域全体の民俗芸能の様相を考える際には、多様性を持ちつつも広域的に分布する民俗芸能と、分布が地域的に限られる民俗芸能と、両者の関係にも十分注意を払う必要があることも明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
瀬戸内海の島々と沿岸地域を初めとした西日本各地の多島海的海域に分布する民俗芸能について、特に、前年度に引き続き、瀬戸内海を中心に現地調査や論文・調査報告・関連情報等の調査・収集を行い、この地域の民俗芸能に関連する各種資料の集成の更なる充実を図る。特に、この地域の民俗芸能に関しては広域的な分布状況の把握が重要となるので、事例数において限定的にならざるを得ない現地調査の成果を補完する意味でも、先行研究等の文献の調査・収集に力を入れて、一層の資料の充実を目指す。 また、本研究の全体的な成果のとりまとめに向けて、これまで集成した各種資料の検討・分析を行う。 更に、本研究で得られた知見を基に、西日本各地の多島海的海域の島々の民俗芸能の様相と東日本各地の島々の民俗芸能の様相との比較、あるいは、本研究を通じて明らかになった、面積や人口規模の比較的規模が大きい島々において民俗芸能の分布が濃密で、伝承も盛んであるという特徴が、多島海的海域、列島、群島、単独など、様々なかたちで存在する他の全国各地の大規模な島々でも見られるか否かといった、本研究を発展させた新たな課題の設定に向けて、本研究の成果の検討・分析を行う。
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