2012 Fiscal Year Research-status Report
権威的法典籍を利用した外国法の継受・定着ないし変改の歴史像と現代への示唆
Project/Area Number |
23530001
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大内 孝 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10241506)
|
Keywords | 権威的法典籍 / ブラックストン / イングランド法釈義 / 近代的不法行為 / アメリカ法の形成 |
Research Abstract |
本研究で言う権威的法典籍の代表的なものとして、18世期イギリスで出版されたブラックストン『イングランド法釈義』について、研究課題にかかる多面的な調査を継続して実施している。 その過程で、『イングランド法釈義』が、アメリカ合衆国初期における訴訟手続の変化と、同時期における近代的不法行為概念の形成とに、多大な影響を及ぼした事実が明らかになったので、その具体的な歴史像を描く、昨年発表した論文の続編を執筆中である。これは、これまで実体法と手続法とを別々の専門家が研究し、反面その一体的発展の姿を描くことができなかった従来の研究を批判して、独立後のアメリカにとっては「外国」であるイギリス法に関する権威的法典籍である『イングランド法釈義』を媒介として、近代的不法行為概念と訴訟手続とがアメリカ独自の形で有機的一体をなすものとして発展し始める歴史像を描き出そうとするものであり、大きな学問的意義を持つものと思われる。 『イングランド法釈義』の、日本への影響を調査したところ、明治初期に、星亨、石川彝の二人によって、それぞれ部分訳が出ていることがわかった。この二つの翻訳については、これまでその存在が知られていただけであったので、それぞれの底本およびその特徴、訳文比較、ならびにそれぞれの翻訳のねらいを中心にして調査研究した結果を論文にまとめた。同時期の日本にとって急務の国家的課題であった法典編纂に関しては、従来フランス法、ドイツ法の影響は多くが論じられていたが、イギリス法の、しかも『イングランド法釈義』の翻訳の影響については従来全く論じられたことがなかったところから、本論文は日本近代法史にとっても少なからぬ意義を持つものと思われる。これは、後掲のとおり、今年中に公表することが決まっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
権威的法典籍の、アメリカ合衆国初期の継受・定着についての歴史像を、昨年度から引き続いて探求しているのに加えて、当初の予定にはなかったが、我が国の明治初期における同上についての研究を行い始めたところから、おおむね順調に進展していると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年までの研究実績を、さらに継続して推進することが妥当と考えられる。すなわち、一方では「研究計画」に記載した調査、分析をさらに進めるとともに、アメリカ合衆国初期に関する論文をもう2回分執筆し、また『イングランド法釈義』が影響を与えたと考えられる、これまで見てきたのとは全く別の側面にも着目して行く予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い生じた未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
|