2014 Fiscal Year Research-status Report
権威的法典籍を利用した外国法の継受・定着ないし変改の歴史像と現代への示唆
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23530001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大内 孝 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (10241506)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 権威的法典籍 / ブラックストン / イングランド法釈義 / 制定法集 / 判例集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で言う権威的法典籍の代表的なものとして、18世期イギリスで出版されたブラックストン『イングランド法釈義』(William Blackstone, Commentaries on the Laws of England, 4 vols., 1st ed., 1765-1769. )について、研究課題にかかる多面的な調査を継続して実施している。 先に、星、石川の二人による部分訳を通して、『釈義』の、明治期日本への影響を調査したのを受け、「外国」人が『釈義』の全体像を把握するために重用したと考えられるブラックストンの『分析』(William Blackstone, An Analysis of the Laws of England. 6th ed., 1771.)に対する調査・紹介に取り組み、資料論文を執筆したので、今年度はさらに別の2側面の調査を行い、資料論文を執筆した。 第一は、『釈義』第1巻が収める全ての判例および制定法を抽出し、『釈義』の引用表記、その巻頁、表題・通称・内容、当該判例が現在収録されているEnglish Reports を特定し、一覧表化したものである。ブラックストンの時代には、現在と異なり、「制定法集」も「判例集」も体系的なものとしては存在しなかったことを改めて説き、そのような情況を前提にした彼が法を説明し叙述する営みが、現代の我々が行う「法学」の営みと、どれほど同質なものでありうるかの問題提起とした。 第二は、同じく『釈義』第1巻が引用する全ての文献・資料を抽出し、ブラックストン独自の略語表記から、現代の読者が同定し検索することができる書誌情報にまで補充して一覧表化したものである。これは、彼の論拠を学問的に追求するため本来不可欠の基礎作業であり、上の「制定法一覧」「判例一覧」とともに、おそらく世界で初めての成果であると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
権威的法典籍の代表である、ブラックストン『イングランド法釈義』に対する多面的な実証的調査の一環として、先に執筆した2つの資料論文に続き、「制定法集」「判例集」および「引用文献・資料」の一覧表を、おそらく世界で初めて整理し発表する資料論文を執筆したところから、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年までの研究実績を、さらに継続して推進することが妥当と考えられる。すなわち、一方では「研究計画」に記載した調査、分析をさらに進めるとともに、『イングランド法釈義』が影響を与えたと考えられるこれまで見てきたのとは全く別の側面にも着目しながら、『釈義』第2巻以降の新訳に重点的に取り組む。さらに、最終年度として、研究課題を総括するまとめと考察を行いたい。
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