2011 Fiscal Year Research-status Report
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23530003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
海老原 明夫 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00114405)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 楠・テア 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 助教 (70451763)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 連邦議会 / 選挙法 / 選挙権の平等 |
Research Abstract |
本研究の主要な対象であるドイツ連邦議会選挙法は2011夏に改正された。改正に伴う諸政党や学界の議論を調査するために、2011年7月から8月にかけて研究分担者大西が渡独し、雑誌論文等の資料の収集、選挙制度研究者との面談等を通じて、貴重な情報を集めることができた。これまでの時点で明らかになっていることは、選挙制度の違憲性について連邦憲法裁判所が指摘した問題が選挙制度そのものの根幹に触れる根本的なものであったのに対して、立法者が採択した改正案は、決して問題の全容を解決するようなものではなく、違憲性を指摘された最大の問題を相当程度除去し得る最低限の対策を講ずるものにすぎなかったことである。このことから立法者自身による選挙法の改正に随伴する困難さが伺われ、その間の事情の分析は、日本において選挙法改正が首尾よく実現するための条件を知るためにもきわめて重要なてかがりとなろう。今回の選挙法改正で積み残された諸問題は、今後の連邦議会選挙の実施にともなって再び違憲訴訟として取り上げられることも予想され、ドイツの連邦議会選挙制度は今後とも憲法上の議論対象たり続けるであろう。したがって、ドイツの連邦議会選挙については継続的に動向を注視し、必要な資料収集を随時行っていくことが不可欠である。研究成果の公表に向けては、新制度についてのドイツでの議論の蓄積が未だ不十分であることに鑑み、これまでの連邦憲法裁判所による判断の詳細な分析を先行させ、それとの関連で今回の選挙法改正を位置づける論文の執筆から進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、選挙法改正が実現したので、その資料収集と新制度の概要の分析に大きな労力を割かれることになった。その分、従前の憲法裁判所の判例分析に遅れが生じていることは否めないが、新制度の調査・分析は次年度以降の重要な課題として予定されていたことであるので、全体としてみれば、研究の進捗状況は概ね順調であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
新選挙法についてはドイツでの議論の蓄積も未だ充分とは言えないので、その全体的評価については今後のドイツ学界の動向をにらみつつ、準備を積み重ねていきたい。研究成果の公表としては、これまでの連邦憲法裁判所の選挙権の平等については判断を網羅的かつ詳細に分析する作業を行い、それとの関係で新制度を位置づける論文を執筆していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は、改正された選挙法に関するドイツでの文献の収集に主として充てられることになる。連邦選挙法については比較的大部の注釈書が複数存在するが、それらが今回の改正を承けて改訂されることが予想されるので、随時その入手をはかる。本年度には、州議会の選挙制度についての資料をほとんど入手できなかったので、その調査・収集にも尽力したい。
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