2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23530003
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
海老原 明夫 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00114405)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 楠・テア 駒澤大学, 法学部, 講師 (70451763)
|
Keywords | 基礎法学 / 選挙権の平等 / ドイツ連邦議会 / 選挙法改正 / 違憲判決 |
Research Abstract |
本研究の当初の予定はドイツ連邦憲法裁判所2008年7月3日判決によって違憲とされた連邦選挙法がどのような議論を経てどのように改正されるかを辿ることであった。しかし2011年11月22日の改正法は2012年7月25日の憲法裁判所判決によって再び違憲とされてしまい、改正作業は再び振り出しに戻ってしまった。したがってドイツの連邦議会選挙制度について最終的な姿を提示し、に評価を加えることは、現時点においてなお不可能である。 そこで本研究においてはに2012年判決とその論理の分析を最優先課題とし、さらにそこで論点とされた事項について掘り下げて研究を行ってきた。まず同判決は、2008年判決でも違憲の最大の理由とされた逆行的得票効果が改正法においても除去されていないとした。ただし、比例配分と小選挙区制とを組み合わせるドイツのような選挙制度では、この逆行的得票効果が生ずることを完全に排除できるものとは考えずに、それを「極力排除」すべきだと表現していることが注目される。次に同判決は、比例配分と小選挙区制との組み合わせからほぼ不可避的に生ずる超過議席に一定の枠をはめようとしている。ただし実際の得票のあり方に左右される超過議席についていかに効果的な抑制手法があり得るのかは定かではない。第三に、一連の判例の展開を通じて、結果価値平等という意味での選挙権平等をめぐる議論がさらに深まったことである。これは実際に投じられた票が平等に扱われるようにということであるが、そのドイツでは一貫して投票率が高いという事実を無視することはできない。日本のように投票率が低迷している中で、単なる一票の重みだけを形式的に論ずることの意味が改めて問われなければならないであろう。そのためにもとくにこの結果価値平等に着目するドイツの議論は、日本における選挙権の平等をめぐる議論を深めるためには必須の論点となる。
|