2011 Fiscal Year Research-status Report
「自分のための」司法参加~パブリックリーガルエデュケーション導入を手がかりとして
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23530004
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
田巻 帝子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (80251784)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / 英国 / カナダ / 連携 / ネットワーク |
Research Abstract |
2011年度は、Public Legal Education(以下PLE、一般市民が法的な問題解決の手段・方法や情報を得るための教育や啓蒙活動等を指す)に関する全般的な資料収集及び各国の実態に関する文献資料を収集・整理することを主眼とし、調査対象国の英国及びカナダのPLEについて基本的な情報を得た。その方法は、PLEに直接関係する刊行物が少ないため、PLE活動の団体が発信する情報をもとに調べた上で、英国ロンドン市を9月に、カナダ国アルバータ州エドモントン市を3月にそれぞれ訪問し、現地においてPLE活動の関係者へのインタビュー調査と資料収集という形で行った。英国はPLENETの開発普及マネージャーのL.Wintersteiger氏らを訪ね、同機関がLaw for Lifeに改組・改名のタイミングと重なったため、英国社会におけるPLE活動が、政府機関や他の関係機関との連携が必ずしも「うまくいっていない」こと、経費削減でひっ迫状況にあることなど、スムーズに進められていないことがわかった。これは、発信されている情報だけではまったく伺い知れないことであり、英国のPLEがわかりにくいことを説明する理由の一つとして、有意義であった。カナダはPLE研究・活動の第一人者であるアルバータ大学公開講座学部L.Gander教授と主たるPLE団体、その他関係の各種政府機関及び民間機関、アルバータ大学法学部内研究所、学生団体組織を訪ね、70年代から続いているPLEの歴史、事業内容や連携の実態など基本的な調査を行った。多数の関係者と面談することで、今後の調査継続に重要なネットワークの構築をすることができた。同時に、日本の「PLEに相当する活動」として、近年学習指導要領に取り入れられて実施されつつある「法教育」について、既に刊行されている一般的な理論書や実践の教材等の文献・資料収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、PLEについて全般的な情報収集と調査対象国の英国とカナダにおける活動の概要を知ることを主眼としており、そのすべてにおいて目標として設定したレベルを達成できている。特に、現地訪問調査を行ったことで、英国は活動の実態がみえてこない理由が、また逆にカナダは多様な活動主体が存在する理由が、それぞれわかるような調査を行うことができ、今後の調査継続に必要な人的ネットワークも構築することができ、その意味で順調な進行状況にあると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず初年度に収集した文献や調査データの整理と分析を徹底的に行う。そのうえで、何が得られたか、何が問題となるかについての中間まとめを作成し、その先の研究の方向性を探る。同時に、第二の現地訪問調査計画を、関係機関と連絡をとりながら練り、初回調査で不足しているところを中心に焦点を絞った調査を行う。その際、PLEに直接関連しないが、PLEの理論や政策に関係すると思われるテーマの文献資料(たとえば司法アクセスに関するものや他の国における法教育の実践事例など)を集め、日本のPLE導入や実現可能性を模索するための材料となる知識や理論を蓄積する作業を行うこととする。当該文献資料には、学術的なものに限定されることなく、一般的な啓蒙書や新聞雑誌、パンフレット等を含めて、広い視野でPLEに関する情報を集めるように心がける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に予定していた支出のうち、英国におけるPLE活動の実態調査旅費に関しては、所属大学内の経費(科研費申請及びその結果によって得られる研究活動支援経費)を用いたことと当初参加を予定していた第6回GAJE(Global Alliance for Justice Education)学会が他の国際学会と日程重複により旅費を使用しなかったことで、ある程度の未使用分が生じた。これに関して次年度には、当初の研究計画にもある調査収集データの整理・まとめなどの研究補助において大学院生を借り上げる予定であり、その謝金等に充当することを考えている。さらに、学術雑誌論文を含め刊行されている関連文献をさらに収集すること(物品)、2012年9月に英国オクスフォードで行われるLegal Services Research Centre学会のPLEセッションに参加し、英国におけるPLEの議論や活動の行方について知見を深めること(旅費)、カナダ・アルバータにおけるPLE活動について、第二の訪問調査を行うこと(旅費)を予定している。さらに、カナダ・アルバータ大学公開講座学部L.Gander教授を中心にPLE活動の主体となっている関係者との情報・意見交換を行うために、日本もしくはカナダでセミナー等の会合をもつことを計画している。
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Research Products
(6 results)