2012 Fiscal Year Research-status Report
「自分のための」司法参加~パブリックリーガルエデュケーション導入を手がかりとして
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23530004
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
田巻 帝子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (80251784)
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Keywords | 国際研究者交流 / カナダ・アルバータ / 英国 / ネットワーク |
Research Abstract |
2012年度は、前年度に実施した英国ロンドン市及びカナダ・アルバータ州エドモントン市でのPublic Legal Education(以下PLE、一般市民が法的な問題解決の手段・方法や情報を得るための教育及び啓蒙活動を指す)に関する訪問調査の結果をまとめる作業に着手した。また、2012年9月に英国オクスフォード大学で開催された第9回Legal Services Research Centre国際研究学会に参加し、PLEに関連する司法アクセスの発展と課題についての各報告を聞き、多数の研究者・実務家と意見交換を行った。また、家族問題に関する司法アクセスの実態を調査するため、ロンドン市内の家庭裁判所を訪問したり面会交流の現場に同席したりした。 さらに、カナダにおけるPLE研究の第一人者であるアルバータ大学公開講座学部L.Gandar教授(前年度の訪問調査の際のホスト役)を基調報告者として迎えた国際研究集会(新潟大学法学部第三回ジョイント国際セミナー)を企画し、2013年3月1日に開催した。これは、本研究課題に掲げているところのPLEの日本における紹介を兼ね、PLE及び司法アクセスの制度や問題などについて、カナダの他にドイツ・英国・韓国・ベトナム・日本の現状について比較法的観点から情報共有・交換を行う趣旨で実施したものである。その際、これまでの本研究課題の調査研究をふまえ、日本については本研究代表者(田巻)が「Participation in the Judicial Procedure for One’s Own Good」と題して報告を行った。同国際セミナーの後半に行われたパネル・ディスカッションでは、各国に共通する課題などを確認することができた。Gander教授の基調講演の内容について、翻訳をして2013年度中に発表することにし、打ち合わせを継続しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目となる2012年度は、上記の研究実績で報告したようにPLE及び司法アクセスをテーマにPLE研究の第一人者を含めて6カ国の報告者(全員が法学の研究者)による国際研究集会を開催できたことは大きな収穫であった。特に、基調講演の内容を日本語に訳して公刊することになり、国民に身近な司法を実現する一つの方法としてのPLEを紹介するという本研究課題の目的に照らして、有意義な成果が期待できると思われる。さらに、前年度に計画していたとおりに、第9回LSRC国際学会にも参加して、ネットワークを広げることができたことから、着実に研究を進めているといえる。 ただ、当初予定していた作業(たとえば日本の司法制度改革における一般市民向けの「法教育」(新学習指導要領に反映された学校教育における法教育ではなく)についての議論がどのようになされていたか・いないかなどについての調査・検討)は、年度が代わってようやく着手したところであり、その意味で「やや遅れている」と言わざるを得ない。この遅延についての理由としては、2012年度に担当したその他の業務(特に学内行政)に時間をとられることが多く、年度後半に採択されたグローバル人材育成の特別プロジェクトにおける実行部隊として急遽様々な業務が発生したことも一因であると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度ということもあり、まずは5月に予定されている日本法社会学会での本研究テーマについてのこれまでの研究成果の報告を行う。報告内容については、後日学会紀要もしくは所属大学の紀要に掲載する予定である。 次に、前年度からの積み残しである、日本における法教育の導入や一般市民への法教育をめぐる議論についての研究調査を行い、また、カナダ・アルバータでPLEに関する第二調査を実施する。その間に最終的なまとめにつなげる作業として、前年度の国際研究集会におけるGander教授の論文を翻訳して発表することで、日本でほとんど知られていないPLEについて紹介を行う。 これらを総合して、日本へのPLE導入や実現可能性について最終的なまとめを行い、報告書を作成することとする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度に計画して実現しなかった、カナダ・アルバータにおけるPLE活動について第二調査を行い、Gander教授との今後のPLEについての意見交換を行うこと(旅費)、これまでの研究調査の成果を日本法社会学会で報告すること(旅費)、さらなる文献収集(物品)を行うことにしている。最終年度となることから、研究調査のまとめの作業において、必要があれば、専門知識の提供やデータ整理援助(謝金等)も視野に入れて有効に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)