2013 Fiscal Year Annual Research Report
現代社会における家族の再構築支援体制に関する実証的研究
Project/Area Number |
23530005
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
南方 暁 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (70125805)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田寺 さおり 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70386449)
田巻 帝子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (80251784)
村山 賢一 新潟大学, 保健管理本部, 講師 (70334670)
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Keywords | 家族の再構築 / 支援機関 / 民事法学 / 刑事法学 / 精神医学 / 事故災害 |
Research Abstract |
本研究は、家族の再構築を①災害や事件による家族解体を素材として検討すること、②法学と精神医学との協同で検討することを目指し、以下の点が明らかになった。 第一は、当事者に帰責性のない要因で家族「解体」がもたらされた事例として、家族構成員による犯罪が他の構成員へもたらす困難、戦争が世代を超えて発生させる困難について検討された。日本の社会では犯罪責任の追及は個人単位ではなくその家族へもむけられる傾向が強い。そのため、他の家族構成員は社会的孤立に直面し経済的・精神的な支援が必要にもかかわらず、支援する仕組みはほとんどない。こうした加害者側への支援のために孤軍奮闘している機関に対しても批判の目が向けられることも多く、機関は、活動資金や「専門性ある対応」(精神医学+法律学など)について大きな課題を抱えている。被害者側への支援体制も徐々に整備されているが、加害者側への支援も並行して行う必要性は大である。犯罪に交通事故を含めると、加害者側の人数も相当数となり、加害者側支援の必要性の認識と支援を支える経済的な裏付けをどのようにするかは喫緊の課題である。第二は、被害が世代を超えて発生する場合の支援も難しい課題である。本調査が対象としたベトナム戦争での枯葉剤被害は世代を超えて社会問題であり(アメリカ政府の責任は政治問題である)、国家レベルでの支援体制を必要としている。組織的支援の必要性をめぐっては議論の余地がないが、被害者家族への支援は個々の家族の事情を考慮に入れる必要があるので複雑な内容となる。当事者の家族関係を維持するためのアクセスや専門家による精神的支援費用など、経済的な基盤確保が決定的に重要である。公的機関ならびにNPOなど多様な機関の連携が、加害者不明あるいは加害者の責任回避状況のなかでの、家族関係の再構築支援に不可欠な要素である(国際的な支援体制の構築も必要となる)。
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