2011 Fiscal Year Research-status Report
ミクスト・リーガル・システム論による日本法の比較法的再定位―条理、名誉棄損、信託
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23530006
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松本 英実 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (50303102)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
葛西 康徳 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80114437)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 南アフリカ / ケベック / スコットランド / ルイジアナ / ミクスト・リーガル・システム / 信託 / 条理 |
Research Abstract |
1. 南アフリカのローマ法学者Rena van den Bergh教授(南アフリカ大学)、ブラジルより二宮正人教授((サン・パウロ大学)を招聘し、国際研究会を開催した(2012年2月4日、新潟大学)。ミクスト・リーガル・システムを論じる際の鍵となる「法典化」をテーマとし、法典化しないことを通して法典化を論ずる試みを行った。法典のない場合と法典化した場合とで、法律家の営為はいわれるほど異なるのか、むしろ共通性が見られるのではないか、という重要な作業仮説を得た。「法典化」はミクスト・リーガル・システム法源論の中心というべき課題であり、本研究の三テーマの考察すべてにおいて基礎となる。 2.国際学会World Society of Mixed Jurisdiction Juristsの定期大会(2011年6月20~23日)イエルサレム・ヘブライ大学)に参加し、Diffusionの観点からミクスト・リーガル・システムを検討すべきことを論じ、ミクスト・リーガル・システム論に於いて日本法研究がなしうる貢献について論じた。 3.英国法制史学会(ケンブリッジ大学、2011年7月13~16日)において、二つの報告を行った。一つはギリシア法における手続きを問題として比較(法)の方法論を問い、いま一つは明治期を対象とした日本法における「条理」の考察であった。 4.カナダ比較法学会50周年記念大会(シェルブルック大学、2011年27~29日)に於いて、信託法をテーマとして、ミクスト・リーガル・システムとして日本法を捉える考察を発表した。日本法に対してもコモン・ローとシヴィル・ローの混合という狭義のミクスト・リーガル・システムを採用して分析を行う意義がある、と論じた。ケベックにおける比較法の力点(mixed systemよりもtrans-systemicの概念が有力である)の違いなどが看取された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ミクスト・リーガル・システムの理論枠組みを用いて、条理(equity)、名誉毀損(defamation)、信託(trust)に問題を絞って分析することにより世界における日本法の再定位を行うことであり、日本法とミクスト・リーガル・システム諸地域の法との共通点・相違点を明らかにし、ミクスト・リーガル・システム理論自体の発展に対し日本法からの貢献を行うことである。この目的は本年度は以下の形で達成された。 本年度は、条理について、法源論の論じ方を基礎から問い直し、法典と裁判例の関係においてこれを問うという観点から、大きな進展があった。特に南アフリカでのローマン・ダッチ・ローについて、新しい比較の試みを法典化(しないこと)をテーマとして行ったことが重要であった。また、日本法における条理についての歴史的分析を、英語で発信する最初の試みを行った。 信託については、一方で南アフリカ法の研究を推進するとともに、他方では日本法の特徴についての分析を進め、国際学会での発信を行うことができた。信託の契約的構成については、南アフリカ法と日本法との共通点が認められる。次年度以降の国際研究会の準備を進め、日本法に影響を与えたインド信託法に関する共同研究の準備も進捗した。 方法論については、Diffusion概念の方法的重要性、狭義のミクスト・リーガル・システム定義の有意性、日本法分析の可能性についての考察を大いに進めることができ、国際的な発信を数次にわたって行うことができた。 当初の研究計画と比べ、名誉毀損についての具体的分析は進捗をみなかったが、条理、信託の検討を優先することが適当であると判断したためであり、名誉毀損についての検討は次年度以降に行うこととした。また、個別発表の活字化、2012年2月の国際研究会成果の公表については次年度に予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
以下のような国際研究会を開催し、国際研究協力体制を構築しながら各論点の検討を進めたいと考えている。1.比較法学会シンポジウムを含む国際研究会。ルイジアナTulane大学Vernon Palmer教授、南アフリカStellenbosch大学Jacques DuPlessis教授、Marius de Waal教授を招聘し、特に信託と法源に力点を置いた検討を推進したい。2.Neil Jones博士(Cambridge大学)を招聘し、イングランドのEquityとtrustを重点的に検討する。3.Stelios Tofaris博士(Cambridge大学)を招聘し、日本信託法の参照例となったインド信託法の検討を行う。4.信託をテーマとしてWorld Society of Mixed Jurisdiction Jurists国際学会を日本において開催し、本研究のテーマを国際的に問う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ミクスト・リーガル・システムの理論的考察、および日本法を含む諸地域の条理、信託、名誉毀損に関する資料収集と研究調査のため、および以下の研究会実施のための費用に研究費を使用したい。1.比較法学会ミニ・シンポジウムを含む国際研究会。ルイジアナTulane大学Vernon Palmer教授、南アフリカStellenbosch大学Jacques DuPlessis教授、Marius de Waal教授を招聘し、特に信託と法源に力点を置いた検討を行う。2.Neil Jones博士(Cambridge大学)を招聘し、イングランドのEquityとtrustを重点的に検討する。3.Stelios Tofaris博士(Cambridge大学)を招聘し、日本信託法の参照例となったインド信託法の検討を行う。4.南アフリカ信託法研究会を定期的に開催し、同法の分析を進める。
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Research Products
(9 results)