2012 Fiscal Year Research-status Report
ミクスト・リーガル・システム論による日本法の比較法的再定位―条理、名誉棄損、信託
Project/Area Number |
23530006
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松本 英実 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (50303102)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
葛西 康徳 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80114437)
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Keywords | 国際研究者交流 / 南アフリカ / カナダ / スコットランド / ルイジアナ / ミクスト・リーガル・システム / 信託 / ケベック |
Research Abstract |
国際研究会の企画・発表を行い、ミクスト・リーガル・システム地域の研究者を中心とする海外の研究者との議論、交流を活発に行った。1.比較法学会ミニ・シンポジウム「ミクスト・リーガル・システムと日本法」(京都大学、2012年6月2日)ルイジアナTulane大学Vernon Palmer教授(JSPS短期招聘による)、南アフリカStellenbosch大学Jacques DuP lessis教授、Marius de Waal教授招聘(比較法方法論と信託)2.混合法研究会を開催した。第1回V. Palmer「パーマー教授の混合法系理論 ルイジアナ法からの広がりと日本法への示唆」(東京大学、2012年6月8日)、第2回Stelios Tofaris博士(Cambridge大学)「コモン・ローとヒンドウー法ーその邂逅からインド契約法成立までー」(東京大学、2012年9月13日)3.国際シンポジウム『信託の国際的変容――比較法制史の観点から』(立教大学、法制史学会東京部会、2012年9月15日、日本信託法とインド信託法の検討)4. 国際シンポジウム「日加比較の新たな視点 ミクスト・リーガル・システム論の展開」(新潟大学、2012年11月11日)関西外国語大学L.Ciano准教授とZurich大学法学部長C.Schwarzenegger教授招聘(教育も含めた方法論の検討と日加比較)5.連続講演会「ギリシア法・ローマ=オランダ法講演会」(東京大学、2013年3月21日、23日)A.Scafuro教授(Brown)、B. Sirks教授(Oxford)招聘。 関連して研究会「ミクスト・リーガル・システム論の展開 法政コミュニケーション学科の研究教育をどう活かすか」(新潟大学、2013年2月23日)を開催した。 オクスフォード、ケンブリッジ、ロンドン、グラスゴー、ライデンにおける調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ミクスト・リーガル・システムの理論枠組みを用いて、条理(equity)、名誉毀損(defamation)、信託(trust) に問題を絞って分析することにより世界における日本法の再定位を行うことであり、日本法とミクスト・リーガル・システム諸地域の 法との共通点・相違点を明らかにし、ミクスト・リーガル・システム理論自体の発展に対し日本法からの貢献を行うことである。本年度はとくに、信託分野での比較研究が進捗した。6月の比較法学会、9月の国際研究会において南アフリカおよびインドの信託法との比較を具体的にすすめることができた。また一般理論については、同様に6月の比較法学会、11月の国際シンポジウムが重要な進展をもたらした。一般理論について対照的な立場をとるV.Palmer教授とE.Orucu教授の双方と直接議論をし、意見交換を行う機会を設けることができ、研究の進展上大きな意味を持った。また、比較対象については、南アフリカ、ルイジアナ、カナダ、スコットランドという代表的ミクスト・リーガル・システム4地域をすべて検討対象とすることができた。このいみでも研究上の大きな前進となった。 また、憲法(信託概念との関係で重要)やメジェッレ研究(イギリスのトルコ、エジプトとの接触により生じた法的経験を論ずるために決定的に重要)といった新たな分析の糸口を得たことは大変意味があった。両論点とも、他の科研費研究との協働によって得られたものである(基盤研究B「イスラーム法の近代的変容に関する基礎研究:オスマン民法典の総合的研究」(東北大学 大河原知樹教授)、基盤研究C「憲法学と各法学分野の役割分担・再考」(慶応大学 山元一教授)。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の五点を方策とし、これまでの研究を継続・発展させつつ、分析を深化させる。 1.ミクスト・リーガル・システムの一般理論と三つの論点(条理・信託・名誉棄損)についての分析をさらに深化し、一定の結論を得るようにしたい。名誉棄損に関する研究をより進展させたい。 2.混合法研究会を開催して、これまでの展開を継続し、国際研究協力体制をさらに構築しながら各論点の検討を進めたいと考えている。 3.最終年度を迎えるので、できれば本研究の総括として国際研究会を開催し(特に、信託をテーマとしたWorld Society of Mixed Jurisdiction Jurists国際学会を日本において開催したいと考えている)、本研究のテーマを国際的に問いたい。 4.イスラム法とコモン・ロー、シヴィル・ローとの接触、混合についての分析の手がかりを得て、次段階の混合法研究を構想したい。 5.成果は日本語・英語・フランス語で発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
5月に南アフリカ法制史学会の国際研究会(Southern African Society of Legal Historians, CONFERENCE Ius est ars boni et aequi, 12-16 May 2013)、 7月に英国法制史学会(British Legal History Conference, Glasgow)に参加し研究発表を行う。南アフリカおよびスコットランド、イングランドにおいて関連研究者との意見交換を行い、交流を深める。ローマン・ダッチ・ローについての研究会を定期的に開催する。8月にはオクスフォード大学においてエジプト法典編纂準備資料の調査をS. Tofaris博士と共同で行う。混合法研究会および国際研究会を開催し、本研究の総括を行う。信託をテーマとしたWorld Society of Mixed Jurisdiction Jurists国際学会を日本において開催したいと考えている。成果を日欧語で発表する。
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Research Products
(21 results)