2011 Fiscal Year Research-status Report
中世ドイツにおける城主支配領域から領国の地方行政組織への発展の研究
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23530007
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
櫻井 利夫 金沢大学, 法学系, 教授 (80170645)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 荘園制 / シャテルニー / ファルケンシュタイン伯 / 城塞支配権 / ノイブルク城塞 / ファルケンシュタイン城塞 / ハルトマンスベルク城塞 / ヘルンシュタイン城塞 |
Research Abstract |
本年度は「11-13世紀の中世ドイツについて、荘園制からシャテルニー制(城塞区制)への移行の具体的な過程の研究」をテーマとした。そのために、先ずW・レーゼナー等の経済史家の荘園制に関するドイツの基本的な文献を検討し、この分野に関する最近の学界動向を把握することに取り組んだ。次いで具体的な研究対象として、12世紀中葉について南東ドイツの貴族家ファルケンシュタイン伯Graf von Falkensteinを取り上げ、またこの貴族自らが作成し現在まで伝承されている『ファルケンシュタイン証書集』(12世紀後半期に成立)を主な史料的基礎としつつ、この貴族の支配権の内容を解明することに取り組んだ。 その結果、ファルケンシュタイン伯の支配権は、ノイブルク城塞、ファルケンシュタイン城塞、ハルトマンスベルク城塞、ヘルンシュタイン城塞という新たな4つの城塞を中心として構築され、しかも様々な支配権がこれら各々の城塞の「付属物pertinentia]として把握されていたこと、またその支配権の内容は伝来の荘園支配権と並んで、その他伯として保持する裁判権(高級裁判権と下級裁判権)、さらに伯が教会フォークト(保護者・代理人)として保持するヘレンキームゼー修道院やザルツブルク大司教の所領等に対するフォークタイ裁判権、十分の一税徴収権等であったこと、城塞の周囲に形成された以上すべての支配権的諸権利からなるファルケンシュタイン伯の支配権は紛れもなく城塞支配権ないしシャテルニー(城主支配領域)として把握すべきことを明らかにした。 この研究結果は、荘園制からシャテルニー制(城塞区制)への移行という歴史の発展図式が成り立つことを、史料に即して初めて解明したという学術的意義をもつものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度について設定した研究計画、つまり11-13世紀の中世ドイツについて、荘園制からシャテルニー制(城塞区制)への移行の具体的な過程の研究を原典史料に即して進め、計画設定の当初に予想した通りの研究結果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度に明らかにした研究成果を学術雑誌等に発表することに努めると同時に、23年度に研究対象として取り上げたのとは違う貴族、例えば、同じく貴族家系の知行帳簿が伝承されている南東ドイツの帝国家人フォン・ボランデンvon Bolanden、あるいは関係史料が比較的良く伝承されている貴族たるヴェルフェンWelfen家を考察対象として、12-13世紀の時期について、荘園制からシャテルニー制への移行を研究する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた状況として、研究の実行を文献と史料の購入及びその研究に集中し、計上した旅費を使用しなかったことがある。次年度には、計画した研究を実行するために、文献と史料の購入以外に、他大学での文献の調査取集をも行い、そのためにも旅費地として研究費を充当する計画である。
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Research Products
(1 results)