2013 Fiscal Year Research-status Report
中世ドイツにおける城主支配領域から領国の地方行政組織への発展の研究
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23530007
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
櫻井 利夫 金沢大学, 法学系, 教授 (80170645)
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Keywords | オーバーバイエルン / ファルケンシュタイン伯 / 城塞支配権 / ファルケンシュタイン証書集 / 城塞アムトAmt |
Research Abstract |
本年度は、中世盛期のドイツ南東部、オーバーバイエルンの貴族ファルケンシュタイン伯 Graf von Falkensteinが所有する城塞を例に取り上げ、その周囲に形成された支配権を城塞支配権として把握しうることを明らかにすると同時に、この城塞支配権の内部構造をも究明するよう試みるための予備的研究を行った。 この伯の城塞支配権を解明する好都合な史料として、伯が12世紀後半期に作成し、また世俗貴族の唯一伝承された所領台帳”Codex Falkensteinensis”『ファルケンシュタイン証書集』がある。この史料を検討した結果、ファルケンシュタイン伯は4つの自由所有城塞、つまりノイブルクNeuburg、ファルケンシュタインFalkenstein、ハルトマンスベルクHartmannsberg、ヘルンシュタインHernsteinを所有し、自分の所領ないし権利権益を、この4つの城塞を基準として記述していることが判明した。換言すれば、この4つの自由所有城塞が伯の比較的大きな所領複合体の中心を構成し、また伯の収益はこれら4つの自由所有城塞の各々を中心とする城塞アムトAmt (officium)の付属物として記述されていることを、差当たり明らかにすることができた。またこの4つの城塞を中核とする所領ないし権利権益は城塞支配権として把握することができるという展望を獲得することができた。同時にこの城塞アムトはある意味で後代の地方行政組織たるアムトに発展してゆくという見通しも得ることができた。そこで、今年度は差当り城塞支配権の内構造を究明する最終目標の前段階として、(1)ファルケンシュタイン証書集の成立年代、史料としての性格や内容、伝承史、(2)ファルケンシュタイン伯の詳細な系譜等を研究し、以上2点を内容とする論稿を所属機関の紀要に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的を達成するために使う史料集の検討をほぼ終えており、その史料集の内容が、設定した研究課題を達成するとともに、当初の見通しに対応するものであることが判明したから。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「概要」でも述べたように、すでに史料に基づいて予備的研究を行っただけでなく、この史料に即して、貴族の城塞支配権の内部構造を究明するという直接の課題に取り組んでゆくことにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末まで入荷する予定で海外に発注した洋書の文献が、入荷しなかったため。 研究課題に関係する洋書文献の購入 消耗品の購入 旅費
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Research Products
(1 results)