2012 Fiscal Year Research-status Report
私人間紛争解決における公平・公正の中国的特質に関する研究
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23530008
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宇田川 幸則 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80298835)
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Keywords | 現代中国法 / 紛争解決と法 / 損害賠償法 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究の2年目である24年度は、前年度に引き続き現有する資料の精査とその補強を行うとともに、現地ヒアリング調査に着手した。具体的には、(1)研究代表者がこれまでに個人的に収集してきた資料および昨年度の現地調査で入手した資料の読解および整理を行った。(2) 近時、日本国内で収集可能な資料も徐々には増えてきたが、今なお資料上の制約も多く、また、本研究を真の実証研究たらしめんとすれば、現地でのフィールドワークは欠かせない。本研究におけるフィールドワークの対象としては、全国人民代表大会(以下、全国人大)および同常務委員会、実際の法案起草作業にあたる同常務委員会法制工作委員会、日本の内閣法制局に相当する国務院法制弁公室、最高人民法院および各地各クラス法院、中央・地方の弁護士協会および弁護士、人民調停員会をはじめとした訴訟外紛争解決機関および紛争当事者である。研究代表者はこれまで上記機関を何度も訪問し、ヒアリング調査を行い、個人的な関係も構築してきた。しかし、それでもなお外国人研究者が上記機関で調査を行うにはいろいろの制約があり、現地でのコーディネータの存在が不可欠である。本研究を遂行するにあたり、渠涛・中国社会科学院法学研究所研究員、辛崇陽・中国政法大学法律碩士学院副院長・教授、其木提・上海交通大学法学院副教授に海外研究協力者をお願いし、これら海外研究協力者の協力の下で、現地でのヒアリング調査に着手した。(3)北京・上海の大学・研究所等において資料収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書「研究実施計画」欄記載の年度計画をほぼ予定どおり履行しており、おおむね順調に進展しているものと思料する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究においては、中国における私人間紛争解決のうち、とくに損害賠償事件に関する調停および裁判における損害賠償金額の算定を主な素材として、「公平・公正な紛争解決」を立法者、紛争解決機関および紛争当事者が如何に認識し、そこに如何なる期待を抱いているのかを析出することで、その中国的特徴を解明する。その上で、中国における紛争解決システム全体における公平・公正論、ひいては正義論・平等論にまで展開しうるプラットフォームを構築し、中国における法・市民・行政三者の関係を解明することをも目的とする。今後は私人間紛争解決制度の設計者、担い手および利用者(=紛争当事者)に対するヒアリング調査を中心に研究を推進していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の最終年度にあたるため、初年度の資料精査により判明した補充を必要とする資料の収集の他、現地でのヒアリング調査に重点を置いた調査研究を行う。具体的には(1)前年度に引き続き、本研究に関する資料収集およびその読解・整理に重心を置いた研究を行う。そのための物品費および人件費・謝金を必要とする。(2)これまでの海外研究協力者との協議結果および前年度の現地ヒアリング調査の結果を踏まえ、現地でのヒアリング調査を実施する。本年度は私人間紛争解決制度の担い手および利用者(=紛争当事者)に対するヒアリング調査に重点を置いて実施する。そのための旅費および人件費・謝金を必要とする。
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