2012 Fiscal Year Research-status Report
ドイツにおける自然保護制度・思想の変遷──ナチズム期とその前後を中心として
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23530010
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
西村 貴裕 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (70367861)
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Keywords | 自然保護 / 自然保護法 / ナチズム / ドイツ |
Research Abstract |
平成24年度は当初の研究計画を若干変更し、1935年のドイツ帝国自然保護法について、詳細な研究を進めた。当初は代表的な自然保護活動家について、彼らの思想変遷・自然保護の根拠づけ等を概観・比較する予定であったが、法制史の分野においては、まず当時の法律について日本語で読める形の情報を出しておくことが有意義であると考えたからである。したがって、これらの代表的な自然保護活動家の思想変遷についても、この帝国自然保護法についての考え方・評価を軸に検討している。この意味ではすでに2006年に小論を発表しているが、これをより詳細にする研究を継続中である。 具体的には、まずこの法律を全訳した。その後、その成立過程と施行状況について、さらに上述のような自然保護活動家の考え方について、一次文献・二次文献によって研究している。特に施行状況については、当時の帝国自然保護局がほぼ毎月発行していた報告書を、夏の資料収集旅行においてすべて入手したため、詳細な像が明らかになりつつある。以上の点については少しずつ論文の執筆を進めており、近々、成果が形になる予定である。 それと並行し、帝国期の「プロイセン国家天然記念物保護局」(1906)の設置とそれ以降の国家的自然保護の歴史について、概略を得るべく多くの二次文献にあたった。ドイツ自然保護が、小さな保護地域の設定という意味での伝統的自然保護から、「景観像」の保護へ、さらには「景観形成」へと向かっていく様が、おぼろげに浮かび上がりつつある。しかし以上のことを論文にするためには、一次文献の収集とそれによる確認の作業が欠かせない。これらについては今年度以降の課題となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度には、当初の研究計画では予定しなかった日本の国立公園史について研究した。これは、「研究目的」の意義づけに資するものであった(平成23年度実施状況報告書を参照)。 平成24年度は、上記のように1935年帝国自然保護法に焦点をしぼりながら、当初の研究計画を実施している。この法律の施行の詳細等は、当初の研究計画には記さなかった点であるが、これも「研究の目的」から逸れるものではない。 また、当初は25年度に実施予定であった20世紀初頭からのドイツ自然保護の流れについて、上記のように前倒しで調査を始めている。 以上より、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、数か月のうちに1935年帝国自然保護法についての成果は出るものと考えている。その後、二つの方向で研究を進める予定である。まず第一に、この新しい分野においては、誰もが前提とすることのできる標準的な知識すら、まだ日本では紹介されていない。そこで、国家的自然保護についての基礎的なドイツ語文献を翻訳する作業を完成させたい。これについて、研究実施期間より前に下訳が完成しているので、さほど時間はかからない。 その後、上記のように1906年以降の国家的自然保護についての概略を紹介するような論文を執筆する予定である。 いずれも、当初研究計画の詳細には掲げていなかったものであるが、これらにより申請時の「研究の目的」をよりよく実現できると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度予算は83,445円の執行残となった。研究に必要な書籍や文献複写のための予算が、想定より少なく済んだためである。本年度以降の、研究に必要なドイツ語書籍等の購入にあてる予定である。 当初の研究計画通り、夏季にベルリンへの資料収集を計画している。研究費の大半は、このために用いられる予定である。その後、残額を、必要な書籍・文献複写・国内資料収集旅行・文具等にあてたい。
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