2013 Fiscal Year Research-status Report
ドイツにおける自然保護制度・思想の変遷──ナチズム期とその前後を中心として
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23530010
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
西村 貴裕 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (70367861)
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Keywords | 自然保護法 / 自然保護 / ナチズム / ドイツ / 景観計画 |
Research Abstract |
平成25年度には、申請時の研究計画と密接に関連する精緻な研究書が出版された。小野清美『アウトバーンとナチズム─景観エコロジーの誕生』(ミネルヴァ書房 2013)である。これにより、申請時に想定していた程度以上に精度を高めた研究が必要とされる状況になった。 そこで、1935年に成立した「帝国自然保護法」に再度焦点を当て、その成立過程・内容・施行状況についてより詳細に研究することとした。その成果を「ナチス・ドイツの自然保護(1)──帝国自然保護法をめぐって」として執筆し、所属大学の紀要(ならびに機関リポジトリ)に公表した。またその副産物として、帝国自然保護法(1935年)の全訳ならびに解題を、同じく機関リポジトリに公開した。 上論文は、従来使われてきた資料のほか、帝国自然保護局の『月報』、さらにドイツ連邦公文書館にある立法時の資料なども使用したものである。研究費はこれらの資料を収集するための旅費に、主にあてられた。 上論文では、ナチス期自然保護法の特質をそれ以前、それ以降の法状況との比較の上で考察した。ここから、当時の自然保護家がこの法律を高く評価する十分な理由があったこと、この法律の施行過程が当時のドイツの政治状態を反映したカオスであったこと、この法律が後のドイツにおける自然保護法の直接的基礎となっていること、などの結論を得た。 上論文とともに、研究計画書に記載した課題I~IVを同時に扱うものとして、当時自然保護の意義づけについてどのような議論が展開されたのかを扱う論考の準備に着手した。この成果は、平成26年度中に公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」にも記したように、研究状況は国内におけるそれも含め、申請時とは変わってきている。この状況に対応するため、当初の研究計画とまったく同じように研究を進めることはできない。 しかしながら、初年度には本研究の対象と比較されるべき日本の状況を自ら研究して論文を執筆したし、また今年度は、周囲の研究の進展に対応しつつ、当時の自然保護法についての詳細な研究を発表した。同時に、自然保護の意義づけについて当時の自然保護家がどのように語ってきたのか、その変遷を分析する論考も準備中である。 以上より、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、ナチス期において自然保護活動の中心にいた者たちが自然保護をどのように意義づけたのか、その変遷をナチス期前後も含めて考察するような研究を準備中である。この研究は、当初の研究計画に記した五つの課題のうちのI~IVに対応するものであり、この研究の完成によって、本科研費申請の際の目的は達せられるものと考えている。 本年度中に成果が得られるものと考えているが、無理だと思われる場合、来年度の新たな科研費は申請せず、まずこの課題の完成に力を注ぐつもりである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
夏季に長期の資料収集旅行を計画していたが、紀要論文の締切が8月末にあったため、当初予定していたコーブレンツの連邦公文書館への旅行を断念し、その段階で帰国せざるを得なかった。その後、これを埋める研究計画旅行を確保する日程をとることができなかった。 本年度の夏季には長期の資料収集旅行を計画しており、上述のコーブレンツ連邦公文書館も含めた資料収集を行う予定である。昨年度の残額は、この資料収集に用いる予定である。
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Research Products
(2 results)