2012 Fiscal Year Research-status Report
国民国家・市民・法の同時的形成と近代法の基礎概念にかんする歴史的研究
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23530012
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
波多野 敏 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (70218486)
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Keywords | 法制史 / 西洋法制史 / フランス法史 / フランス法 / フランス革命 |
Research Abstract |
本年度は、主として1789年8-10月の議会の議論をもとに、「法」の制定の手続をどのように考え、またそこで「国民の意思」というものがどのように把握されているかということを中心に検討した。そこで明らかにされたことは、以下の通りである。 1789年の人権宣言において、国民が主権者となり、法は一般意思であると規定されたが、この人権宣言を一つのきっかけとして、国制あるいは憲法の正当性は歴史的伝統から国民の意思に変わってゆく。革命のはじめには、憲法は既に存在しており、これを修正することによって新しい国のあり方を考えてゆこうという立場も第二身分を中心に一定の影響力を持っていたが、国民議会が大多数の国民によって支持されているということを根拠に成立し、封建制が廃止され、人権宣言で国民主権が宣言されるというプロセスをへて、国制や憲法の正当性は、歴史ではなく国民の意思に求められるようになる。ここで、「法」も慣習法のように歴史的伝統を根拠にするものではなく、国民の意思をもとにした「一般意思」となる。「法」は、歴史とは必ずしも関係のない、国民の選択となり、歴史的・慣習的に承認されてきた特権ではなくなるのである。 しかし、さらにこの国民の意思というものがどのように把握できるのかという点に関連して、立法に際しての議会と国王の役割をどうとらえるかということが問題となる。いわゆる国王の拒否権を認めるか否かという問題であるが、これは国王の権限をどうとらえるかという問題よりもむしろ国民の意思をどうとらえるかという問題に深く関連しているということも明らかにされた。 一般意思としての法やこの基盤となる国民の意思と言った観念については、引き続き、さらに25年度以降検討を進めてゆく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各年度毎のフランスでの資料収集も含めて、ほぼ予定通り調査、資料収集なども進められている。 成果についても、一部は、研究会等での研究報告を行い、論文の形で観光するなど、関係の研究業績もほぼ順調に発表できている。
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Strategy for Future Research Activity |
革命期の政治家の著作並びに議会議事録の調査・研究を中心とし、同時にフランス国立文書館または、地方の文書館で革命期の文書についての調査を行う。研究計画に大きな変更はない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
必要な図書などを購入するほか、フランスでの資料調査・収集を行う。
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