2012 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ《概念法学》形成過程における法と言語の関係の史的分析
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23530016
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
守矢 健一 大阪市立大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00295677)
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Keywords | 古典学 / 法学 / 言語 / ドイツ / 近代 |
Research Abstract |
今年度も研究は迷走を続けたが、そのために思いがけない発見があった。Savignyの言語と法学の関係の分析の一環として、彼の著名な作品Vom Beruf unsrer Zeit für Gesetzgebung und Rechtswissenschaft の翻訳を行っているが、その第一章は公刊され、第二章は校正中である。最近のSavigny研究が凡そ言語の問題に鈍感であるため、最近のSavigny に係るモノグラフィを徹底的に批判する書評を、いわゆるサヴィニー雑誌の依頼に応じてドイツ語で執筆し、マヌスクリプトを手渡した。Savigny研究の途上で、Savigny の法学理解にTacitus 的な視角、Bacon 的な視角が大きく影響していることに気づき、この点から現在論文を執筆中である。その過程で、Dirksen を指導した古代史学者Süvernとの関係を詰める必要が生じ、全体の研究に脈絡がついてきたと同時に、大きな歴史的パースペクティヴが得られたことは喜ばしい。 しかし、Adversaria の編集作業が ―― 大阪市大の組織的激動と相まって ―― 決定的に遅延しており、この点で、研究条件の劇的な改善が望まれてならない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Adversaria の編集作業が遅延を重ねているため、一面から見れば、やや研究の進展が遅れていると言わざるを得ない。まとまった研究時間がほしいが、現在の大阪市立大学大学院法学研究科教員には、それがきわめて困難なのである。歯を食いしばって研究する以外にない。ただ、Savigny 研究そのものとの関係では、思わぬ方角から、人文主義と近代との結節点が鮮やかに浮かび上がってきたという感触を得た。これまでにはドイツ語やそのほかの言語による研究でも明らかでなかった近世・近代のヨーロッパ思想史との脈絡がつかめてきた。その意味では、思いがけぬ研究の進展が見られたと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、2013年5月末にストックホルムで開催されるシンポジウム「観念論哲学と法律家」での招聘講演のために、SavignyとBaconの深い関係を指摘する研究を進めたい。Dirksen とSavignyとの関係の洞察も、この研究をてことして質的に深化させたい。同時に、可能な限り、Adversaria の編纂を行いたい。全体は、19世紀ドイツの新人文主義研究としての性格を強く持つようになってきた。それは当然の帰結ではあるが、この方向を、Civic Humanism との関係に留意しつつ深めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Savigny およびDirksenの研究に必要な、とくに人文主義時代の貴重書を可能な限りで購入したい。そのほか、購入不可能な史料を実地に見るために研究旅行(海外および国内)を行いたい。
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