2013 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ《概念法学》形成過程における法と言語の関係の史的分析
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23530016
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
守矢 健一 大阪市立大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00295677)
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Keywords | ヨーロッパ法史 / 古代と近代 / 言語 / 市民的人文主義 / タキトゥス主義 / サヴィニ |
Research Abstract |
研究実績としては、サヴィニーの『使命』翻訳が最も重要である。全12章のうち、7章までをほぼ訳出し終えたが、とりわけ7章については訳註作成になお難航が見込まれる。今年度中に第2章を公表することができた。これに緊密に関連して、論文「『使命』における、サヴィニの慣習法論について」を法学雑誌60巻(2014)に公刊し得た。これは18世紀後半の慣習法論とサヴィニの慣習法論との関連性を重視し、サヴィニの慣習法論を観念論哲学との関係でのみ捉えることに適切な限度で警戒すべきことを指摘したものである。サヴィニの慣習法論の論点では、2013年初夏にスウェーデンのストックホルム大学で行われたシンポジウムにおけるドイツ語による招聘講演において、サヴィニとイギリス近世の経験論哲学者F・ベイコンとの意外且つ重要な知的近縁性を指摘し、併せて、サヴィニにおけるタキトゥス主義および市民的人文主義の伝統の継続をも指摘した。かくて、サヴィニの法学に多角的に光を当てる試みは成功したが、他方、Dirksen との関係を詰める作業は、サヴィニのテクストの複雑性を目の当たりにしたつけで、遅々として進まない。ただし、ストックホルム講演の準備過程で、Dirksen に大きな影響を与え、またプロイセンの教育制度改革にも大きな役割を持つことでサヴィニと接点を持つ、Suevern という古典学者がTacitus を評価した論文に接しえたことは大きい。ストックホルム講演のドイツ語原稿は2014年1月にストックホルムに送付した。なお、法史学研究で最も権威のある(ことになっている)サヴィニ雑誌に、最近の若手によるサヴィニ研究書の書評を依頼により執筆、公表した。Adversaria の作業は遅々として進まない。
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