2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530023
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
浅野 宜之 大阪大谷大学, 人間社会学部, 教授 (50321097)
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Keywords | インド / アジア法 / 比較法 / 司法制度 |
Research Abstract |
日本との経済的関係が強まりつつあるインドにおいて、増え続ける法的紛争の処理を促進するために設置されたロク・アダラトについて、主に文献資料の検討を行った。 資料については主にインド各地の高等裁判所、地方裁判所に存在する法律サービス庁や司法省のものを中心に、統計資料を渉猟し、これをまとめた。また、ウッタル・プラデーシュ州バラナシにあるバナラス・ヒンドゥー大学法学部において、同学部教員との意見交換を行った。さらに、バラナシ地方裁判所においてロク・アダラトを担当している判事から、ロク・アダラトの歴史的展開や、バラナシ地区におけるロク・アダラトの組織、近年の活動の概要について聞き取りを行った。 研究開始当初は、文献などからロク・アダラトの主な取扱い対象は交通事故補償問題、消費者問題、労働問題などであると想定していたが、実際に聴き取り調査や統計資料の検討などから、州によっては軽微な刑事事件を多く扱うロク・アダラトや、債務問題処理を多く扱うロク・アダラトなど、想定とは異なる面があることが明確になった。 上記の検討については、関西大学マイノリティ研究センター最終報告書『多元的世界における「他者」』(孝忠延夫・安武真隆・西平等編)に「インドにおける正義へのアクセスの拡大とロク・アダラト」というタイトルにて、1987年法律サービス庁法および西ベンガル州法律サービス庁規則について概観したうえで、アーンドラ・プラデーシュ州、グジャラート州、西ベンガル州、デリーにおける現状を、統計資料をもとに検討したものを執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでインドにおける紛争解決制度について概要を検討してきた。これは、けんきゅ目的である裁判外紛争処理制度を理解するために、まずは裁判を含めた紛争処理制度全般について知見を得ることが必要と考えられたためである。この点については、とくに裁判官の任命制度を軸に制度の把握を行い、その結果をアジア経済研究所の「アジアにおける民主化と司法」研究会において発表し、論文執筆の機会を得た。 上記の検討をもとに、裁判外紛争処理制度、とくにロク・アダラトについての検討を行うことができた。上述のように現地大学での教員との意見交換や、文献収集などを進めることができ、基礎的な研究を進めるための準備を整えることができたと考える。また、データを整理するためのコンピュータ環境の整備も行うことができ、作業が進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
収集した資料をもとに、ロク・アダラトにかんする検討をさらに進める。日程などは未定であるが、年内の早い段階でインドを訪問し、実際のロク・アダラトの活動について聞き取りなどを行ってさらに知見を深めたいと考える。訪問先としては、デリー、アーンドラ・プラデーシュ州、西ベンガル州などを予定している。 また、できればネパールなど近隣諸国を訪問し、裁判外紛争処理制度の比較検討のための準備作業を行いたいと考える。 最終的に得られた検討結果を総合し、来年度のアジア法学会あるいは海外でのアジア法にかんする国際学会での報告を行うとともに、論文にまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度には海外でのアジア法にかかわる学会があり、これに参加することで意見交換、情報収集を行う予定にしている。翌年度請求分と合わせて旅費とし、実施したい。 また、可能であれば、南インド地域における紛争解決にかかわる資料、書籍を入手し、研究の遂行に役立てる予定である。
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Research Products
(1 results)