2012 Fiscal Year Research-status Report
公務員制度における公法的規律と私法的規律のあり方に関する日仏比較法研究
Project/Area Number |
23530028
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
下井 康史 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (80261262)
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Keywords | 公務員法 / 地方公務員労働法案 / フランス官吏法 / 公務員関係の法的性質 / 勤務条件決定システム / 公法的規律 / 私法的規律 / 労働協約 |
Research Abstract |
平成24年度の研究は、前年度に引き続き、我が国における公務員制度改革の動きを追いつつ、2010年のフランス官吏法改正の内容を検証した。 日本については、平成24年11月、地方公務員法改正案、及び、団体協約締結権を一般職非現業国家公務員の多くに承認しようとする地方公務員労働法案が、平成24年臨時国会に提出された。その内容は、前年の通常国会に提出された国家公務員法改正案と国家公務員労働法案のそれに類似するが、地方特有の制度も含まれている。また、そこで予定されている団体協約の効力は、民間企業労働組合における労働協約の場合とは異なり、規範的効力が否定され、債務的効力に限られる。 他方、フランスについては、2010年の官吏法改正により、官吏組合が協約を締結しうる旨が明文化され、一定の要件を満たした官吏組合が締結した協約であれば「有効」である旨も定められた。しかし、「公務員は法令規律上の地位におかれる」という、フランス公務員制度における従来からの基本原則も維持されている。 以上のことから、平成24年度は、公務員の勤務条件決定システムにおいて、法令による公法的規律と団体協約による私法的規律とのあり方及び関係を考察するという視点から、わが国における上記各法案を検証し、そして、フランスの2010年改正官吏法における「有効」との定めが有する意味、及び、今後のフランスにおける公務員制度改革の方向性を分析した。かかる研究成果の一端は、「地方公務員制度における新たな労使関係の構築に向けて(覚書)」地方公務員月報2012年6月号2-21頁、及び、平成24年10月7日に法政大学で開催された日本公法学会第二部会報告「公務員――特殊な労働者、そして特殊な行政客体」その他で公にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、平成24年度は、主として、公務員勤務関係の法的性質についてのわが国及びフランスにおける学説と判例を検討する予定であった。 しかし、わが国の公務員制度に関する研究としては、地方公務員法改正案と地方公務員労働法案が平成24年臨時国会に提出されたことから、勤務関係の法的性質の検討と並行して、上記の改正案及び法案を具体の素材として、公務員制度における公法的規律と私法的規律のあり方、すなわち法令による規律と協約による規律との関係について、具体的には、いかなる勤務条件を法令事項とし、いかなる事項を協約事項とすべきか、法令と協約の関係についていかなる法制度を構築すべきであるのかという、立法論的・法政策的研究を実施した。従って、予定が部分的に変更されたことになるが、それは、平成24年臨時国会に上記二法案が提出されたためであるから、研究の順序が若干前後したに過ぎない。 他方、フランスについては、2010年官吏法改正を分析しつつ、将来における公務員制度改革に関するフランス行政法学界の議論の検討した。これらにより、公務員勤務関係の法的性質の考察が予定通り実施された。 以上のことから、研究の目的はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究推進予定は以下の通りである。 まず、日本法については、平成23年通常国会に提出された国家公務員法改正案と国家公務員労働法案、そして、平成24年臨時国会に提出された地方公務員法改正案と地方公務員労働法案が、いずれも不成立となったため、将来における改革を見据えた基礎理論の検討として、公務員勤務関係の法的性質を考察する。この考察の素材には、上記各法案の内容も含まれる。なぜなら、これら各法案は、公務員の勤務条件決定システムのあり方を検討するにあたり格好の素材となるためである。なお、かかる考察の成果の一部は、平成25年5月19日に鹿児島大学で開催される予定の日本労働法学会で公にする予定である。 次に、フランス法については、2010年改正官吏法にかかるフランス法学界の議論を引き続き検証する。 更に、法令による公法的規律の対象と協約による私法的規律の対象との範囲画定の問題と併せて、両規律の内容がいかなるものであるべきなのかについて、特殊な個人としての公務員、及び、特殊な労働者としての公務員という視点からの考察も行い、さらには、かかる特殊規律が及ぶべき人的範囲の検討も行うことで、公務員制度における公法的規律と私法的規律のあり方・内容・射程を総合的に検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度研究費はほぼ計画どおり使用したが、若干ではあるが、次年度使用額が生じた。これは、同年度中に購入を予定していた書籍の公刊が遅れたためである。平成25年度に使用する予定の研究費はその分を併せて使用する。 平成25年度に使用する予定の研究費は、上記の研究を実施するための文献や機材購入、及び、出張等に使用する。 購入を予定している文献は、公務員法及び公務員制度に関するものに限られず、他の行政法分野のものにも及ぶ。公法的規律と私法的規律のあり方・内容・射程について、公務員法と他の行政法分野における比較という視点がきわめて重要となるからである。また、労働法学や行政学の文献が必要となることは言を俟たない。 出張は、日本国内における各種行政法及び労働法の学会や研究会への出席・報告のために行われる。本務との関係で可能な限り、フランス現地調査のための出張も視野に入れられる。
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