2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530029
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 祐介 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (50304291)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 生活保障 / 遺族年金課税 / 生命保険課税 |
Research Abstract |
本研究は、年金制度や社会保険制度、さらには国や地方公共団体自体を大きな意味での事業体とみて、その出資ないし拠出(税や社会保険料など)と利益分配(公的給付)、さらには私的年金などの私的給付まで取り込んだ包括的課税モデルを探ることを目的とする。 本年度は、公的年金とそれを補完するものとしての私的年金という位置づけから、原資調達及び運用、給付を含む年金制度全体に対して考察を及ぼし、望ましい年金課税の包括的課税モデルを提示する。生活保障の観点から、包括的生活保障としての公的年金制度の位置づけとそれを補完するための最低限の私的年金制度、さらにそれ以上に資産を形成し生活水準を向上させるものとしての私的年金制度という位置づけから、検討を行った。 従来の生活保障とその課税をめぐる各研究は老齢年金を基礎として研究を行っていたところ、本研究では40歳の給与所得者が死亡し、配偶者と子供二人が残された場合を念頭に、いわゆる遺族年金を題材とし、かつ公的年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)、私的年金(厚生年金基金の死亡一時金など)の他、相続財産、損害賠償(犯罪被害者等給付金含む)、労災保険給付、生命保険などを横断的に検討した。生活保障という側面から、各給付が非課税とされてきたが、各遺族のセーフティ・ネット利用可能性には程度があるところから、ある遺族についてほとんど生活保障に配慮がされていないのに対し、別の遺族について、特に生命保険金(死亡保険金)受領者には過度の生活保障の配慮が見られるなど、生活保障という名の優遇が不公平な状況を生み出していることが判明した。 本研究では、遺族の生活保障という問題を税制上考慮するために、遺族を取り巻く各制度を包括的・網羅的に念頭に置き、かつそれをめぐる各税目も横断的に考察する必要があることなどと結論づけている(詳細につき税法学567号掲載予定論文参照)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、主として国内の研究動向や他法分野の動向を踏まえ、生活保障としての(公的・私的)年金課税制度のあり方について、手続を含めて包括的な検討を行うこととしているが、これら年金の他にも、生命保険や労災保険給付まで視点を広げ、生活保障の側面から課税のあり方を検討しており、研究目的はほぼ順調に達成していると思われる。国内外の研究動向や他法分野の動向にも目を光らせ、十分な資料収集と検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画に基づき、(1)24年度は、公的医療保険などその他の社会保険制度及びそれを補完する私的医療保険などと税制のあり方について、事業体課税の視点を踏まえつつ検討を行い、問題点の私的及び課税モデルの提示を行う。さらに、(2)25年度は、従来帰属所得や人的資本課税の問題として捉えられていた住宅及び教育に関するあるべき課税を、それらに対する給付の側面を踏まえた上で検討を行う。これらについて、基本的に変更はなく、給付と課税を一体的に捉えた包括的な課税モデルの提示を目指して、検討を引き続き行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、23年度税制改正が特異な形で行われ(震災の影響と23年度税制改正のずれ込み、11月末において特に手続法の重要改正が行われ、その後、通常の24年度改正が行われたこと)、それに伴って各種の書籍や資料の出版に大幅なスケジュール変更が加わったことが、研究費の一部が残額となる原因となった。 次年度では、24年度税制改正の後に、社会保障・税一体改革が行われる見込みとなるが、昨年度のような(震災の影響を受けた)特異な税制改正が行われる可能性は低く、書籍や資料の出版・公表スケジュールも予見可能なものになると見込まれることから、本年度の残額と合わせて、これら書籍や資料の購入・入手に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)