2013 Fiscal Year Annual Research Report
占領と憲法-ラテン・アメリカ諸国、太平洋諸国および日本
Project/Area Number |
23530036
|
Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
北原 仁 駿河台大学, 法学部, 教授 (50195278)
|
Keywords | 日本国憲法 / 合衆国憲法 / 権利章典 / フィリピン憲法 / プエルトリコ憲法 / 比較憲法 / 司法審査制 / 憲法判例 |
Research Abstract |
平成23年度のプエルトリコでの調査研究及び平成24年度のフィリピンでの調査研究を行い、平成25年度の研究では、アメリカ合衆国の国立公文書館まで足を延ばすことができた。こうして収集した文献・資料を基に研究するなかで、カリブ海諸国及びフィリピンにおける合衆国の占領政策は、合衆国の憲法原則を占領地の事情に適応するかたちで行われたことが確認できた。つまり、合衆国が占領した地域では、合衆国憲法をモデルとするいわば植民地版の憲法というべきの組織法が制定されたのである。したがって、合衆国憲法の規定と合衆国の占領地域の組織法の規定の内容は、類似している。 しかしながら、今日まで連合国の占領下での日本国憲法の制定過程についての研究成果の蓄積は膨大なものではあるが、従来の研究では、合衆国があたかも日本のみを占領し憲法を制定させたかのような前提に立っていた。本研究では、この点について合衆国には占領政策に伴って組織法と憲法を制定してきた歴史があることを指摘することができた。 たとえば、合衆国憲法の修正1条の文言とプエルトリコの1917年の組織法の信教の自由と政教分離原則の規定の文言(2条18項)は、類似しているだけでなく、合衆国憲法の権利章典には明記されていない公金支出条項が1917年組織法には規定されている(2条19項)。この規定は、プエルトリコの支配に属しない人物・団体に対する「慈善、産業、教育及び博愛の目的」に対する公金の支出を禁じている。この文言は、日本国憲法89条の「公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業」に対する公金支出禁止条項の文言と酷似している(英文の表現も同じである―ただし「産業」という語句が抜けている)。 さらに、日本国憲法が合衆国の司法審査制度を取り入れたことによって、日本の憲法学自体もフィリピンやプエルトリコ等のカリブ海諸国の憲法学との類似性を指摘できるのである。
|