2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23530038
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
楠 茂樹 上智大学, 法学部, 准教授 (70324598)
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Keywords | 会計法 / 無謬性 / 談合 / 官公需 / 入札監視委員会 / 予定価格 |
Research Abstract |
前年度の基礎的調査をベースに、官公需、官製市場の特殊性を踏まえつつ、競争入札等契約手法の適正化へ向けたモニタリングのあり方についての検討を行った。その際、自らが実務上の取組みとして行っている、国や地方自治体等各種発注機関設置の(契約監視に係わる)委員会等での活動を通じて、実務上の問題点を考察することに努めた。四半期ごとに開催されるような一般的な契約監視委員会のやり方では、アドバイザリー的な役割にとどまるか、形式審査に終わってしまうという実態がより鮮明に把握できた。総務省の予算執行監視チームのような逐一チェックが適正化に向けては効果的ではあるが、外部の人間のコミットメントが難しく、人員を内部化する必要があるが、その際、独立性の維持が課題になるとの認識に至った。旧政権の行政刷新会議は一つの例ではあるが、政治的パフォーマンスに偏って自滅した。これは重要な経験である。一方、自治体オンブズマンのような、内部事情に明るくない組織によるモニタリングは、そもそもの動機(すなわち不正の告発を目的とする)ゆえに、形式だけでよしあしを決めてしまう傾向が強く、発注機関が直面する問題の実態に迫りきれていない状況がよく理解できた。 また、官公需の契約過程において重要な意味を持つ「予定価格」制度に関し、その理論的、実際的根拠、あるいはその事前公表のあり方をめぐる問題点について自ら論じ、発展させることを通じ、発注者の支出についての考え方(その元にある財務当局の査定についての発想)の根本に迫る必要性(端的にいえば、予算の単年度ごとの査定という制度的背景、それが民主主義の要請であるという無謬性への拘りというマインドからくるものの検討の必要性)があることをはっきりと認識するに至った。これは憲法上の議論にも結びつくものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
官公需におけるモニタリングの必要性を検討するうえで、(1)フィールドワークによって実務的状況が明らかになった点、(2)さまざまな検討を通じ、予算、決算のあり方を意識しつつ予定価格制度、そしてその背景にある財政制度の立法論的検討(それとの関係でモニタリングのあり方も変わる)が本研究の進展のためには不可欠の要素であることを気づくに至った点等から、重要な成果を得られたものと考えている。 また、こうした作業の成果を一部反映させた著書『公共調達と競争政策の法的構造』を上智大学出版から2012年秋に刊行した。現在多くの研究者や実務家からコメントをもらい、分析、今後の調査等への反映の仕方について検討を進めている。これも大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたるので、モニタリングのあり方についての一定の方向性を見出し、可能な限り整理することを目標とする。 また現在(2013年4月)、自民党部会で予定価格の見直し(会計法以外での特別立法の制定)、さらには公共工事法制の全面的見直しを検討しているとのことであり、この動向に合わせてモニタリングのあり方も変わることになるので、立法の動きをウォッチしつつ最新の実務的ニーズに対応した成果に結びつける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フィールドワークに使えるノート型PCを新規購入、およびメモリスティックやコピー用紙、その他必要なソフトウェア等PC関連用品への支出を予定している。 東京以外の研究機関で2度ほど研究発表を予定しているので、そのための出張旅費の支出を予定している。 また新たに刊行された和書、洋書その他資料等の購入費用の支出を予定している。
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