2013 Fiscal Year Annual Research Report
「個人の尊重」を基本理念とする、刑事手続条項の新たな人権解釈の創出
Project/Area Number |
23530041
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
押久保 倫夫 東海大学, 法学部, 教授 (30279096)
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Keywords | 個人の尊重 / 人間の尊厳 / 刑事手続条項 / 自己決定 / 規範衝突 / 絶対性 |
Research Abstract |
本年度は、本課題の中心概念である日本国憲法13条の「個人の尊重」及び、それと深く関係するドイツ連邦共和国基本法1条の「人間の尊厳」の概念について深く探求を行う研究を行い、それに基づく刑事手続条項の新たな人権解釈の指針を追求した。 そしてその成果を「『人間の尊厳』対『人間の尊厳』―ドイツ連邦共和 国基本法1条1項の規範衝突―」 『変動する社会と憲法』(憲法理論叢書 12)として発表した。 そこでは、「人間の尊厳」同士、あるいはそれと「生命に対する権利」との規範衝突と見られる事件が、比較的近年ドイツで発生していることから、その原理的考察を行った。まず、人間の尊厳と生命権を明確に区別する立場から、人間の尊厳同士の規範衝突とされているものの多くは、他の枠組みで捉えるべきことを明らかにした。しかし、稀な事例ではあるが、人間の尊厳同士の規範衝突が存在することもあることを示し、その場合の解釈可能性について考察した。それは、これがアポリアであることを正面から認めるか、人間の尊厳の比較衡量を認めるかであるが、後者については実践的及び原理的理由から、与しえないことを論じた。とりわけ、「人間の尊厳」の基本法体系上の特別な地位、即ち生命権等とは異なり、人権思想を基礎づけ、基本権の妥当性を根拠づける地位にあることからして、人間の尊厳の比較衡量はその絶対性を放棄することであり、人権・基本権のあり方全体を変えてしまう恐れがあることを指摘し、他の基本権とは峻別された扱い(絶対性の維持)を要求する正当性を有することを明らかにした。 また、石埼学・笹沼弘志・押久保倫夫編『リアル憲法学』(第2版)を公刊した。私が執筆した第2章「博愛への想像力―個人の尊重」では、「個人の尊重」を、全体主義との対比で自らの人生は自らが決めること、また利己主義とも異なりすべての個人を同様に尊重することであることを論じている。
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Research Products
(2 results)